バッテリー駆動のEV「タイカン」でも最強仕様なら「ターボ」!?
ポルシェ「タイカン」は純粋な電気自動車(BEV)だ。エンジンは搭載していないが、上級グレードには、過給器の装着を示す「ターボ」「ターボS」というグレード名が与えられている。
タイカンのベーシックな仕様が搭載するモーターは、最高出力が300kW(408ps)だが、タイカンGTSは440kW(598ps)に高まる。さらにターボは500kW(680ps)、ターボSは560KW(761ps)に達する。このような動力性能の違いを従来のガソリンエンジンに当てはめると、自然吸気とターボの関係に似ている。電気自動車でも高出力の仕様だから、「ターボ」の名称を与えた。
「930ターボ」以来の伝統をEV時代に引きずるべきか
そこで改めて今のポルシェに搭載されるガソリンエンジンを見ると、ベーシックな「718ケイマン」の標準仕様でも、2Lターボを搭載する。VWやメルセデス・ベンツと同様、ポルシェも効率の向上を目的に、エンジンの排気量を抑えてターボを装着するようになった。
つまり今のターボは、環境性能も視野に入れたアイドリングストップのような実用メカニズムだ。走行性能を向上させる特殊な手段ではない。
この点を踏まえると、タイカンの高性能グレードに「ターボ」の名称を与える発想は古典的だ。極端にいえば、1970年代の911シリーズに加わったターボのように、特別な存在として扱っている。
言い換えれば電気自動車のタイカンにターボの名称を与える背景には、パワーユニットがエンジンからモーターに変化しても、ポルシェの本質は911ターボの時代から変わっていないという意味も込められているのだろう。高性能を示す普遍的なキーワードとして、ターボのグレード名が付けられている。
その気持ちは理解できるが、電気自動車の時代を生きる若いユーザーから見れば、紛らわしい名称だ。過去にこだわり、引きずっている感じがする。