常日頃から音や温度の変化には敏感になるべし
走行24万kmまでは基本的に大きなトラブルを経験することなく運行を続けてきたが、取材でのサーキット走行時にエンジンから微かな異音が発生。当時の担当者がすぐに気付きすみやかにエンジンを止めたためブローには至らなかったが、その後、マインズでエンジンを開けてみたところ、3番ピストンのメタルが欠損……。
エンジン内の各部に砕けたメタルの破片がまわり、クランクシャフトにも曲がりが確認できた。当時、ドラテク企画でサーキット走行を定期的に行っていたが、走行前後の点検やオイル交換などのメンテナンスはしっかりと実施していた。だが、問題はそれ以前にオイルクーラーを装着せず、純正ラジエータのままでサーキット走行などを行っていたことにあるとの診断。確かにテストでプロドライバーがサーキットで全開にする機会もあり、冷却系の強化をしていなかったため、ボディブローのような負担が積み重なりエンジンが徐々に蝕まれていったのだろう。
ドラテク企画時にはオイルクーラーを装着していたが、過去を遡ると無理を強いていたことも事実。最初のオーバーホールから12万kmが経過した時点で、2基目のエンジンを投入することとなった。その際、前述したように、ピストン/コンロッドは「東名パワード」製の鍛造品を投入。N1ピストンなどの純正部品価格が高騰しており、コスト的にもより強度の高いアフターパーツとの逆転現象が起きつつあった。ブーストアップ仕様のR34ニュル号にはややオーバークオリティではあるが、信頼性を考えての採用とした。
基本的にはそれまでのエンジン同様、マージンを持ったブーストアップ仕様だが、エンジン内部のムービングパーツを軽量な鍛造品に変更した効果なのか、吹け上がりのスムーズさにはさらなら磨きが掛かった。アクセルのツキも確実に向上し、チューニングパーツの効果はノーマルに近い仕様でも十分に発揮されるということを思い知った次第。現在、二度目のオーバーホールから約8万kmを走行しておりエンジンフィールは今も絶好調。12万km、24万kmとエンジンを開けているので、次は36万kmあたりで三度目のオーバーホールを目論んでいる。
シャシー系に関しては、走行20万km時にマインズにてフルリフレッシュを実施済み。各部ゴムブッシュなどの劣化はほんの少しずつ進行するため、普段から接していてもなかなか実感しにくいもの。しかし、アーム類やメンバーなどを一新したことで、その走りは明らかにシャキッと生まれ変わった。ただ、あれからすでに12万kmほど走行しているので、最近ではヤレを感じることも。もうそろそろシャシーまわりの二度目のリフレッシュを検討する時期かもしれない。
直近のトラブルでは、2019年の年末に中国自動車道を走行中にヒーターホースの破断によるクーラント漏れで水温が急上昇。初めて高速道路上での緊急停車を余儀なくされた。レスキューに駆けつけてくれた広島県廿日市市のショップ「RiO(リオ)」に修復を依頼。これを機に劣化していた水回りのホースなどを一新している。エンジンルームの奥底にあってなかなか目視しにくい部分だけに、定期的なリフレッシュが必要であることを再認識した。
(この記事は2020年6月1日発売のGT-R Magazine 153号に掲載した記事を元に再編集しています)