クルマ好きにとって最高速が速いクルマ=エライ
そのころの代表的な車種をピックアップすると、トヨタでは80スープラとアリスト。この2台は、280馬力の直6ツインターボ(2JZ-GTE)エンジンが大きな武器だ。
2JZは日産スカイラインGT-Rのエンジン(RB26DETT)より400ccも排気量が大きく、RB26と同じく頑丈な鋳鉄ブロックを採用。排気量が大きいだけでもトルク面で有利だが、2JZはボア×ストロークが86.0×86.0(mm)のスクエアエンジンだったので力強さ(トルク)があった。
その代わりレッドゾーンは6800回転からとやや低いが(RB26は8000回転)、高回転に頼らない分、2JZは壊れにくいというのが長所だ。
とくにスープラは空力もよく、全長が短い割にホイールベースも長かったので、最高速仕様にチューニングするのには適していた。
日産ではまず初代シーマ(Y31)とフェアレディZ(Z32)。初代シーマは3リッターV6ターボのVG30DETが与えられ、お尻を沈めながら加速していく姿が象徴的だった。
Z32は同じ1989年にデビューしたR32GT-Rよりも空力性能が優れ、cd値は0.31(R32は0.40)を誇っており、同じ280psでもノーマルのZ32の最高速は270km/h、R32GT-Rは250km/hとアドバンテージを誇っていた。
GT-Rも空力はR33になって改良され、cd値も0.35~0.39に改善(リヤスポが4段階の可変式のため)。ホイールベースもR32に対し105mm延長され、ボディ剛性も大幅に向上した。ドイツ・ニュルブルクリンクでのアクセル全開時間が15~20%も長くなり、第2世代GT-Rでいえばもっとも「直線番長」的存在だ。
トヨタ日産以外では、マツダRX-7(FD3S)と三菱GTOが挙げられる。FD3Sは典型的なコーナリングマシンだが、cd値は0.32しかなく、540psで200マイル(320km/h)オーバーを達成したチューンドFDもある。三菱GTOも3リッターV6ターボエンジンと、直進性に有利な4WDという組み合わせに加え、cd値は0.33とGT-Rよりは有利なスペックが与えられていた。なおホンダでは、当時ターボのスポーツモデルはなく、「直線番長」と呼べる車種はなかった。
というわけで、繰り返しになるが「直線番長」は敬意を込めたフレーズで、新車テストでも最高速アタックに一喜一憂し、チューニングカーの最高速レコードにロマンを感じた人だけでなく、クルマ好きにとって、やっぱり最高速が速いクルマ=偉いという図式は永遠に変わらないはずだ。