新車開発時から情報共有できるのが強み
自動車メーカーのモータースポーツ活動と密接な関わりを持ち、コンプリートカーの開発も行う通称「ワークス」たち。一般的なアフターパーツのメーカーは車両が発表されてから開発を始めるが、ワークスは自動車メーカーの子会社であったり深い資本関係があることが多い。そのため事前に詳細な情報やデータを共有することができ、新型車と並行して開発を進められるのが大きなアドバンテージだ。
そんな利点を活かして世に送り出されたワークスのコンプリートカーで、とくに過激なスペックを誇り伝説と化しているマシンを何台か紹介したい。
270馬力を発揮するニスモ「270R」
まずは日産のワークスであるニスモ(NISMO)。初のストリート向けコンプリートカーと言われるのは、S14「シルビア」をベースにした「270R」だ。エンジンは名称から想像できるとおり270psで、タービンこそ通常のS14と同一ながら専用インタークーラーとハイカム、燃料ポンプやインジェクターも大容量タイプに交換された。
さらにファイナルギヤを変更し加速力をアップさせると同時に、機械式LSD/強化クラッチ/強化ドライブシャフトも投入。足まわりこそ車高調ではなくノーマル形状だが、ブレーキもキャリパーとローターをサイズアップし、外装は専用のエアロパーツという力の入れようだ。
生産された台数はわずか30台で当然ながら抽選となり、価格はBNR32 GT-Rとほぼ変わらない450万円だった。のちにニスモはR33 GT-Rで限定99台の「400R」や、R34 GT-Rで限定19台の「Z-tune」といった、伝説と呼ぶに相応しいコンプリートカーを製作する。
レースカーをオマージュした「TRD2000」
次はトヨタのワークスである「TRD」。1990年代の後半に行われていたレース「JTCC(全日本ツーリングカー選手権)」は、2L以下で同じメーカーのエンジンであれば載せ替えが可能なレギュレーションだった。そこで戦うために作られたのが、AE101の「カローラ」に、「セリカ」などの3S-GEを搭載する「TRD2000」だ。
生産は99台と少なく、しかも購入できるのは25歳以上に限られており、全額を先払いすることや保証が一切ないこともあり、実際は10台ほどしか売れなかったと言われている。
なお、ベース車両であるAE101のGTもエンジンは4A-GEで、160ps/16.5k-gmとパワフルだったが、TRD2000は180ps/19.5kg-mとさらに上で、プラス400ccの排気量の恩恵も大きい。ちなみに外観の違いは若干のローダウンとステッカー類と地味で、いわゆる「羊の皮を被った狼」なところに惚れ込んだ人も多いだろう。