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世界限定350台の「NSX タイプS」に試乗! ホンダが次世代スポーツカーに繋ぎたかったこととは

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TEXT: 西川 淳(NISHIKAWA Jun)  PHOTO: 本田技研工業

世界のスーパースポーツに影響を与えた初代「NSX」

 第2世代NC型「NSX」の生産が早くも終わろうとしている。そのあまりに早すぎる幕引きはまるで評価の確定を拒んでいるかのように、筆者には思えた。それどころか2代目には失敗作という烙印が押されたのだろうか、とさえ訝しんだ。

 1990年代から2000年代にかけて、都合16年にもわたり作り続けられた初代NA型。その登場は世界中のスーパースポーツカーに多大な影響を与えたものだった。フェラーリのクオリティはNSXの登場と同時にはっきりと向上したものだし、マクラーレン(ゴードン・マーレー)は世界一のスーパースポーツカー「F1」をこの世に生み出した。そんな偉大なる初代と同じ名前を得て比べられること自体、荷が重過ぎたということだろうか。

世界はようやくNSXに追いつこうとしているが……

 2016年になってようやく登場した第2世代は、2+1モーターの先進的なハイブリッドシステムを組み合わせた縦置きV6パワートレーンを積むリヤミドのハイブリッドスーパーカーである。そのこと自体は大注目に値した。初代と同様、フェラーリをはじめ多くのスーパーカーブランドから注目されてはいたのだ。

 10年以上にも及んだ紆余曲折による空白の期間もまた、新たなスポーツカーの評判にいい影響を与えたとはいえなかった。

 日本での販売価格は2000万円を超えてきた。NSXに2000万円も出せと? そう叫ぶ人も多くいた。しかし彼らの脳みそは25年前の1991年で止まっていたと言わざるを得ない(初代は基本的にフルモデルチェンジをせずに価格をほぼキープして作り続けられた。16年間で新車価格の上昇はわずかに200万円だった)。

 10年間におよんだ断絶と、1990年代以降今も続く日本経済の低迷(給与所得の伸び悩み)こそが、2000万円のNSXを「高い」と思わせた主たる要因であり、海外生産であったことはもちろん、その先進的な中身をつぶさに観察すれば、決して高い買い物でなかった。

 ちなみにNSXの新車が800万円だった1991年にV8フェラーリの新車は1800万円だったが、2016年には3000万円になっている。その差は変わらず1000万円。違ったのはマラネッロがその間もV8フェラーリを作り続け、モデルチェンジ(進化)を重ねて徐々に値札を上げてきたこと、である。

 残念ながら2代目はこの2022年末をもって生産を終える。高度なハイブリッドシステムを持つミドシップスーパーカーとして時代に先駆けて登場したにもかかわらず、わずか6年でモデルライフを終えるとは! いろんな意味で、なんともったいない話であろうか。

 6年のモデルライフは想定内、という声もあるだろう。フルモデルチェンジの時期が来て、不確定要素の多い時代だから一旦リセットした、と言われたなら思わず納得してしまいそうだ。けれども世界のスーパーカービジネスを見渡せば、じつはモデルライフを長めに取る場合が多い。フェラーリ「458」は2010年に登場し、15年に「488」へとマイナーチェンジ、2019年にさらに「F8トリビュート」へとマイチェンし現在に至る(そろそろ生産も終わる)。ランボルギーニ「ウラカン」も10年近く作ることになるだろうし、V10ミドシップカーと考えればガヤルドの11年も足して20年間も同じコンセプトで作り続けた。

 今回、ホンダというジェネラルブランドにして上場メーカーである経営の戦略が、2代目NSXに早めの引導を渡す結果となったことは間違いない。スーパーカーファンにとっては最悪のシナリオだったが、ホンダはもちろんスポーツカーを諦めたわけではない。むしろ近い将来、新たなカタチで提案すると宣言した。未来は決して暗くない。

 そう思う一方で、歴史の途絶えたスポーツカービジネスの難しさを最もよく知るはずのホンダが、こんな中途半端な決断を下したとはスーパーカーファンを自負する筆者にとってにわかには信じがたいことでもあった。

 その時、再び思った。こんなことならやっぱり2代目はNSXと名乗らなければよかったのに……。初代の名前に傷がついちゃうじゃないか。

 とはいえ2代目がダメなクルマだったかというとそうは全く思わない。ちゃんと育て上げれば初代を超えるとは言わないまでも、世界に誇るスーパーカーにはなり得た。そのチャンスを自ら摘み取って、挙句、初代の名声にまで傷をつけてしまうなんて! ホンダ自ら失敗作であるという烙印を押したも同然、じゃないか。そう思ってしまったのだ。

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