クルマのカスタムはファッションと同じ自己表現だ
可愛らしい軽自動車、ダイハツ「ムーヴラテ」をベースに遊び心満点の仕上げを施したカスタムカーを紹介しよう。ウィットに富んだドレスアップは、カスタムの可能性の広がりを示しているようだ。
あえてこだわった溶接処理のマフラー
まず目に飛び込んでくるのがリヤまわりの作りこみだ。バンパーはカットされ、ナンバープレートも右端に移設。スペースを確保したところで、大胆にうねるワンオフマフラーをセットしている。
現代の技術をもってすれば、ステンレス管を使って美しく仕上げることが出来るが、あえて手間のかかる昔ながらのマフラー製作工法にこだわっている。その理由は、輪切り溶接処理によって生み出されるマフラーは、溶接跡が曲げを強調出来るポイントになるからだ。
クルマのイメージをスパルタンな方向に向けるのであれば、このアプローチこそが効果的といえる。ムーヴラテの場合は、特殊な取り回しのマフラー形状を採用しているので、より目立つ仕様になるわけだ。
レーシーだけではないアイデア
また、リヤにはバックパネルに直接マウントさせたバーチカルウイングもセットしている。このウイングは、通常のGTウイングと違って、専用のアルミ製の板をボディに直接マウントするため強度が高いことで知られている。国内最高峰のツーリングカーレース「スーパーGT」では、多くのチームがバーチカルウイングを採用し、レース業界では常識化しているほどだ。
そんなレーシーなウイングをこのムーヴラテはセットしているが、じつはこれも普通ではなかった。通常、アルミ製の板で製作するステーを極太のパイプを組み合わせて製作し、インパクトを高める工夫をした点が面白い。アングル組みしたパイプによってバーチカルウイングを表現している。
さらに注目すべき点を紹介しよう。それがリヤゲートに取り付けられた水道の蛇口だ。ホースをつないで洗車道具が置かれているが、じつはダミーではなく、専用タンクと電動ポンプを搭載し、蛇口をひねれば実際に水が出る仕組みだ。
実際オーナーに声をかけたとき、車両に取り付けたホースから水を出しながら洗車をしている最中であった。駐車場を使ったイベント会場では、まずお目にかかれない光景だったので声をかけた次第だ。
一方、リヤに比べてフロントはわりとおとなしい仕様だった。だが、エアロパーツは装着されていて、Nデザイン製に加工を加えて前置きインタークーラーをセットしている。
エンジン本体はノーマルだが、サクションパイプ等はアルミ製に交換、HPIレーシングタイプのエアクリーナーを大幅な加工を加えてセットしている。
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ノーマルのままでは物足りない、市販のアフターパーツをセットしただけでも満足できない。しかもそもそもムーヴラテ用のカスタムパーツが少ない。こうしたことから、アイデアと他車種からの流用加工を施してカスタムした、オーナーの想いが詰まった特別なムーヴラテであった。