時代や規制に合わせて進化を遂げている
パワー系チューニングの第一歩として、今も昔も定番であるスポーツマフラー。エンジンの性能をフルに引き出すという目的は一緒ながら、法律の改正やトレンドの変遷に合わせて進化してきた。テール部分のデザインやメカニズムを中心に、スポーツマフラーの歴史を振り返ってみたい。
黎明期は効率重視のシンプルな構造が多かった
今でこそ保安基準適合の製品が当たり前になっているものの、昔はサーキットをはじめクローズドコースでの使用が大前提であり、消音器どころか触媒すら存在しない車検非対応品も多かった。
そのためデザインもシンプルにならざるを得ず、基本は左右のいずれか片側から出すタイプとなり、テールのカットはストレートかスラッシュ。本数はオーソドックスなシングルにロードクリアランスを確保しやすいデュアル、珍しいところではS30型フェアレディZの「432」にも採用されていた縦デュアルも人気だった。
車検対応品が増えるなか斜め跳ね上げの砲弾型が大人気となる
1980年代の後半になると車検対応をうたうマフラーが増加。多くは弁当箱のように大きいサイレンサーを備えていた。内部にグラスウールを入れたり隔壁を設けることで消音し、耐久性に優れるオールステンレス製も各メーカーから登場する。
デザイン面における大きな動きがあったのは1990年代、いわゆる砲弾型サイレンサーの斜め出しが登場したときだ。
代表といえるのがアペックスの「N1マフラー」で、従来のサイレンサーよりスマートな印象を与えつつ、優れた排気効率とスポーティなサウンドを両立する。このデザインはスポーツカー以外にも受け入れられて、ワゴンやミニバンでも砲弾の斜め出しが大ブレイクする。
同じ時期に流行したのは100φ以上の大口径テールだ。280psのスポーツカーが多く世に送り出され、排気効率を追求した結果といえるだろう。
また旋回性能に少なからず影響するマフラーの重量も注目されるようになり、競技車両へ向けたフジツボの「RM-01A」は肉抜きしたパイプを使うなど、部位ごとに最適な肉厚とすることで、車種によっては純正から50%もの軽量化を達成している。
加工の難しいチタン製マフラーも増え始める
加工の技術が進化すると圧倒的な軽さを誇るチタン製マフラーも徐々に増え、高価ながらサーキットを中心としたユーザーから強く支持されている。チタンは焼けたときに青っぽくなる独特な色合いも人気。これを真似して本体はステンレスだが、出口のみチタン風に着色した製品も多い。
メカニズムでは出口へ向かうに従って口径が大きくなるメガホン構造や、低中速のトルクを出すためあえて中間に絞りを入れるなど、走るステージやエンジンの特性によりさまざまなタイプがある。
高級輸入車などに標準のバルブ開閉式も登場
最近のトレンドは可変バルブ付きだ。サーキットでは抜けのよさ最優先し、ある程度の音量もOKだが、街乗りは周囲に迷惑をかけないよう静かな音にしたい、という要求を両立させるために開閉するバルブを採用。全開時(ストレート)と平常時(サイレンサーを経由)で排気の流れる経路を切り替えるタイプや、単純に排気を遮って音量を落とすなど、製品によって構造は異なる。
手動による操作に加えアクセル開度やエンジン回転数で制御することもでき、重量は増えるが1台でサーキットから通勤までこなすユーザーにとっては利点が多い。
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カスタマイズの基本とも言える社外マフラーへの交換。性能アップとともに気持ちいいサウンドを奏でてくれる人気アイテムは、ただ性能を追求するだけではなく、周囲の環境などにも配慮し、厳しい規制をクリアするために日夜開発が続けられている。今後はどのようなマフラーが登場するのか、楽しみだ。