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ベントレー「ベンテイガ」と「アルピナXB7」は同じベクトル!? いましか味わえない純然たるアルピナテイストとは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 堤 晋一

ショーファードリヴンを意識しつつも、グランドツアラーとしての最上級に挑む

 2021年春、東京都内で行われたプレス発表会以来の対面となるBMWアルピナXB7は、とくに外界で目の当たりにすると、雄大と言いたくなるサイズ感。

 メーカー公表値によるとホイールベースは3105mmで、全長×全幅×全高は5165mm×2000mm×1830mm。そして車両重量は2510kgに及び、まさしく「フラッグシップ」という言葉がふさわしい堂々たる体躯に驚かされる。

 この日の試乗会は、湘南の鎌倉・逗子周辺が舞台。市街地および、近郊のワインディングロードがコースとなった。

 まずはV8ツインターボエンジンに火を入れ、アクセルペダルをちょっと踏むと、想像していた以上にグワッと車体が動き出す。またブレーキもつま先で軽く「触った」つもりが、意外なくらいに強く制動が効いてくる。したがって、鎌倉周辺の古くて狭い住宅街ではサイズ感も相まって、少々気を使いつつの走行となった。

 ところがクルマにおおむね慣れたころに、広めの道に出て前方が開けたことを確認しながら少しだけスロットルを踏み込んでみると、印象は一変。スピードの上昇にしたがって、すべてがスムーズに作動してくれる。

 今回は高速道路のドライブには至らなかったので、621psの最高出力と800Nmの最大トルクは片鱗さえも味わうことはできなかったのだが、それでもアルピナはアルピナ。不用意にスロットルを開けると、恐怖心さえ抱かせるような加速感を披露する。

 また、プレステージサルーンのB7と同じく絶対的な音量は静かなものながら、脳髄がとろけてしまいそうになるくらいに「スウィート」なV8サウンドを、まるで控えめなスキャットのように聴かせるエンジンは、やはりアルピナの出自がチューナーであることを感じさせるのだ。

 いっぽうワインディングロードでは、さすがにコンパクトSUV並みとは言わないものの、ミドルクラスのスポーティ系SUVくらいのアジリティを披露し、ドライバーが積極的に楽しむことができる仕立てとなっている。

 ただし乗り心地については、オプションの23インチという超大径ホイール/タイヤが装着されているせいか、BMW X7には設定のないアルピナ独自のドライブモード「COMFORT PLUS」を選んでいる時でも若干のコツコツ感はある。でもそれは「例えばロールス・ロイス カリナンあたりと比べれば」、という程度の話。

 リヤに設けられたキャプテンシートの住人にとっても、超高級車にふさわしい立ち振る舞いを保ちつつ、同時に極上のグランドツアラーであろうとする明確な意思表示の表れと受け取るべきであろう。

 そして筆者が最も感銘を受けたのは、「アルピナマジック」に代表されるBMWアルピナ独自の世界観が、ドライバーに対しても、あるいは後席の住人に対しても矜持のごとく大切に護られている。そんな姿勢や哲学が垣間見られることであった。

 すでに最後のBMWアルピナXB7となるフェイスリフト版が本国では発表されており、まもなく日本でも切り替わるそうだが、そちらはおそらく広報車として配備される可能性は低いとのこと。だからこそ、この素晴らしきアルピナマジックの最終進化をかみしめるような、短くとも豊穣なテストドライブとなったのである。

●BMW ALPINA XB7
ビー・エム・ダブリュー アルピナXB7
・車両価格(消費税込):2528万円
・全長:5165mm
・全幅:2000mm
・全高:1830mm
・ホイールベース:3105mm
・車両重量:2580kg
・エンジン形式:V型8気筒ビターボ
・排気量:4395cc
・エンジン配置:フロント縦置き
・駆動方式:4輪駆動
・変速機:8速AT(アルピナ・スウィッチ・トロニック付き8速スポーツ・オートマチック)
・最高出力:621ps/5500-6500rpm
・最大トルク:800Nm/2000-5000rpm
・0-100km/h:4.2秒
・巡航最高速度:290km/h
・公称燃費(WLTC):km/L
・ラゲッジ容量:750-2120L
・燃料タンク容量:83L
・タイヤ:(前)285/35ZR23、(後)325/30ZR23
・ホイール:(前)9.5Jx23、(後)11Jx23

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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