新型SUVが次々とクーペ化していく理由とは
16代目となる新型クラウンが、なんとワールドプレミアというカタチで発表され、先行して販売が開始されたのは、ウワサ通りのクラウン・クロスオーバーであった。国産、そしてトヨタ最上級セダンのクラウンがクロスオーバー化されたのには、さまざまな事前情報はあれど、実際にベールを脱いだその日、すのスタイリングを目撃した誰もが驚かされたはず。
さらに、今秋にも発売予定となるホンダの新型SUV「ZR-V」(海外仕様は懐かしいHR-Vのネーミング)は、シビックのプラットフォームを使用する。ヴェゼルとCR-Vの隙間を埋めるモデルながら、これまでセダンに乗り続けてきた人でも違和感なく乗れる、土の匂いが皆無のシンプルで強い塊感をベースにした、艶のある色気とスポーティさを併せ持つ佇まいが魅力。そして伸びやかでクーペライクなエクステリアデザイン、セダンライクな運転姿勢、セダンやクーペに近いパーソナルな空間が実現されている。
セダン&クーペ不振がクーペSUVを増殖させている
そう聞くと、SUVやクロスオーバーモデルがセダンやクーペに歩み寄っているように思えるが、自動車メーカーの戦略的には、その逆と考えられる。つまり、セダンやクーペが不振だからこそ、セダンやクーペをクロスオーバー寄りのモデルとして成立させようとしているのではないか。そもそもクラウンがクロスオーバーモデル化されたのには、クロスオーバーモデルがクラウンのようなクルマを必要としたのではなく、クラウン側の生き残り戦略として、セダンやクーペ、ワゴンとともにSUVライクなクロスオーバーモデルを登場させたというのが正解だろう。
とはいえ、SUVやクロスオーバーモデルとクーペの融合は、いまに始まったことではない。2013年に登場した初代ホンダ・ヴェゼルは、クーペの艶、ミニバンの合理性、SUVの価値を融合した、国産クロスオーバーSUVの先駆けとなった1台。武骨さのないクーペライクなエクステリアデザイン、運転席と助手席を分断するブリッジ状のセンターコンソールはスーパーカー的カッコ良さも併せ持ち、パーソナル感のある仕立てなどが魅力のインテリアによって、一躍大ヒットしたことは記憶に新しい。
欧州ではBMW X6が2008年に登場し、英国をはじめ予想を上回るヒットとなった。BMWでは「Sports Activity Coupe(SAC)」と呼ぶクーペライクなSUVスタイルは、その後X4というラインアップの追加にとどまらず、アウディをはじめとするクーペライクなSUVが溢れる嚆矢になったのである。