軽商用車とは思えぬ走り
さて、そんなスペーシア ベースの上級、XFグレードを走らせれば、もう驚きしかない。とにかく軽商用車感がゼロ。シートのかけ心地、しっかり感ある良質な乗り心地、巡行時の静粛性、加速性能、そして操縦安定性といった部分が、ほぼスペーシアのNAモデルなのである。
市街地はもちろん、東京の首都高速道路でも試乗したのだが、大人2名乗車+荷物でも動力性能に不足なし。4ナンバーの軽商用車に乗っている、というハードルの低さはあったかもしれないが、想定外によく走り、快適だったのだからびっくりだ。
最大積載量を350kgではなく、実質的な200kgに設定したことで、リヤサスを硬めずに済んだことも、乗り心地などへのメリットにつながっていると推測できる。
スズキの全車に電子パーキングブレーキやオートブレーキホールド機能は未搭載で、足踏み式ブレーキを採用したままとはいえ、スズキの予防安全技術のスズキセーフティサポートはスズキの軽乗用車とまったく変わらず、ACCまで備わるのだから、遠出も無理はない。
望めば全方位モニターまでオプション装備できるのである(エアバッグは運転席、助手席に加え、前席サイドエアバッグも完備)。これなら一般ユーザーが、アウトドア、キャンプ、最大ベッド長1740mmを生かした車中泊に使うのにもうってつけ。それで税金が安く済むのだから、乗用軽自動車のスペーシア×スペーシア カスタム×スペーシア ギア&軽商用車のいいとこ取りをした、超万能なクルマに仕上がっているというわけだ。
なお、WLTCモード燃費は軽商用車NO.1の21.2km/Lを達成している(2022年8月現在)。
荷物運びのためではなく、アウトドアなどで活躍させるマイカーとして選ぶなら(愛犬を乗せるのにもいい)、装備の充実したXFグレードがマストな選択だ。価格はFFで154万7700円と、スペーシアの標準マイルドハイブリッド車よりは高くなるものの、顔つきが近いスペーシア カスタムのハイブリッドGSの166万3200円よりはお手頃価格となる。
最大2名乗車で遊びのための“移動する秘密基地”になるマルチな使い勝手で、ある意味ベースとなったスペーシアを大きく凌ぐ性能を持つ。軽商用車を一般ユーザーが選ぶなら、これしかない……とさえ思えたほどである。