憧れのシビックのレースカーを再現する
「グループA出光モーションシビック」を覚えているだろうか。1990年代に大人気のモータースポーツとなったグループAツーリングカーレースであるJTC(全日本ツーリングカー選手権)最小排気量クラスのディビジョン3において大活躍したマシンである。
VTEC旋風が席巻した1990年代
EFシビック時代から圧倒的な強さを見せつけ、シビック勢は出光モーションシビック以外にも「PIAAシビック」、「無限モチュールシビック」といったマシンがつねに上位を独占する状態だった。1990年には、中子修と岡田秀樹らが駆る出光シビックがクラスチャンピオンを獲得している。
チーム自体はホンダ陣営のワークスに属し、マシン開発は無限が担当していた。レースモデルがEFからEGへと変わる頃には、搭載エンジンのポテンシャルも大幅に高められ、小排気量NAながらも200psを発生させる強力なユニットを開発しレースに投入。
驚異のパワーアップに大きく貢献したのがホンダが独自に開発した可変バルブタイミング・リフト機構、つまり「VTEC」の存在が大きく、速くてパワーを出せるだけでなく、過酷なレースでの使用にも耐えられる信頼性も証明し、一般市場においてもシビックを中心にVTEC旋風が巻き起こった。
チューニングもぬかりなし
圧倒的な強さを見せつけた出光モーションシビックへの憧れから、念願のレプリカモデルを作ってしまったのが群馬県在住のやなぎさんだ。
今から6年前に7万円で購入したという1994年式のEG6は、ラッピングとステッカーを組み合わせて見た目そっくりの出光カラーを完全再現。細かく見ていくと当時のステッカーはとても懐かしく、とくにホンダ・プリモに歴史を感じる。あの時代、プリモ店がシビックでクリオ店がレジェンド、ベルノ店がS2000やNSXを販売していたことを思い出す。
そんなやなぎさんのEG6は、イベントでは魅せるクルマとして存在感を示し、サーキットではタイムを出せる仕様としてチューニングを施して製作。そのため、エンジン本体の加工を施し、腰上、腰下を含めてメカチューンによってパワー・トルクの向上と耐久性アップをほ実現。
排気系はEXマニを戸田レーシング製にし、マフラーはスプーン製N1を装着させている。また、サスペンションはアペックスN1戸田スペシャルで、バネレートはフロント21kg、リヤ18kgの組み合わせ。デフはクスコのRSで、タイヤはアドバンA050、ホイールはエンケイRPF1RSを履かせている。
見た目だけでなく中身も含めて完全にレース仕様として製作していて、内装はアンダーコートも剥がしてロールバーとフルバケットシートをセット。快適装備はすべて取り外して、ほぼレースカーの内装になっていた。
バブル末期に国内で開催されていたツーリングカー選手権にハマっていた世代なら、レースカーへの憧れを自らの愛車で再現するという気持ちも理解できるだろう。そうは言っても、なかなかやろうと思っても出来ないことなので、このシビックからはオーナーのやなぎさんのこだわりと情熱を強く感じられるのである。