SUVをキャルルックに!
クルマ好きであれば「キャルルック」という言葉は聞いたことがあると思う。そのルーツは1960年から1970年代にかけて、アメリカ西海岸で流行ったサーフカルチャーが生み出した乗り物文化に由来する。仲間とともにクルマで海辺まで乗り入れて、海で遊んでバーベキューをし、ビーチキャンプを楽しむ。そんなライフスタイルから遊び心あふれるカスタムカーが誕生する。
キャルルックのルーツは?
当時、ベースとして使われたのがVWタイプ1(ビートル)やタイプ2(ワーゲンバス)、カルマンギアだった。その理由はとてもシンプルで、安価でメンテナンスも容易だったからに他ならない。
学生にとって、アメ車は高嶺の花で一部のお金持ちの息子しか乗れないクルマだった。しかし、VWビートルやバンなら何とか頑張ってアルバイトをすれば買えるクルマ。そんな理由から、西海岸に住む遊び好きな学生サーファーの間で大流行し、クルマを直すついでに、華やかな原色系のカラーリングを施し、ローダウンにメッキパーツを多用するカスタム文化が誕生。それこそがキャルルックであった。
不思議と丸目が王道とされているキャルルック。これについては諸説あり、ビートルからの流れで丸目という説もあれば、ポップな雰囲気を作り出すために丸目が個性的な表情になるからという説もある。
ここで紹介するキャル仕様車もその例にもれず独特の雰囲気を持った丸目仕様の1台だ。ベースは日産「エクストレイル」というからオリジナル感はまるでない。オーナーは西海岸ならではのファッショナブルなサーファー文化と雰囲気が大好きでこのスタイルを選んだと話す。日本でもよく軽バンでワーゲンバスに似せたキャルルックのクルマを見かけるが、SUVでやっている例はほとんどいない。その珍しさも狙って2014年式日産「エクストレイル」をベース車として選んだそうだ。
キュートなフロントマスクはこうして生まれた
大胆に変更を加えたフロントマスクは独特の表情を作るためにダイハツ「ミラジーノ」のグリル、メッキバンパー、ヘッドライトを流用。この特殊加工をオーナー自らが手がけ、FRPを駆使して製作したというから驚きだ。
また、リヤについても、通常、リヤハッチに取り付けるナンバープレートをリヤバンパーに移動させ、ハッチはシンプルにスムージング。車両全体を鮮やかなグリーンにオールペンし、サイドに遊び心あふれるホワイトの2トーンデザイン処理も施す。
オーナーがこのエクストレイルを使ったキャル仕様でイメージしたのは、西海岸の風景に自然と溶け込むスタイル。そこで、ドアにヤシの木と波、さらにLOCO Beachのロゴマークをデザインし、雰囲気を高めるピンストライプ処理がクルマ体全体に施されている。これはオーナー自らがフリーハンドで描いたものだ。
また、キャル仕様において欠かせないのが、タイヤとホイールの選択である。17インチを履かせながらもタイヤにはホワイトリボンをプリントし、ホイールはアメ車でお馴染みのムーンアイズのベビームーンによく似たタイプを履かせている。
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カスタムカーというとカッコ良さやイカツイ雰囲気を重視する方向にいきがちだが、サーフボードとヤシの木を置いたキャルルック仕様エクストレイルの姿は、そうしたベクトルとはまったく違うキュートでさわやかな印象だ。
これならボディペイントやホイールなどを変更して、沿岸警備のライフセイバー仕様にも転用できそうなルックスだ。いずれにしても海がよく似合うクルマであった。