大型ブレーキキットは市街地でも有効
ブレーキキャリパーごと交換するのは大がかりなチューニングであり、コストも相応に掛かる。しかし、なんとも言えないブレーキタッチと絶大な安心感を手に入れることができる。ストリートチューンでもブレーキキャリパー交換は有意義なチューニングなのだ。
社外品の扱いやすさはまるで別物
ブレーキチューンの入門編はパッドやフルードの交換であり、ローターまで交換すれば中級編。そして真打ちとも言えるのがキャリパー交換である。
レース車両やサーキットメインのクルマではキャリパー交換も珍しくないが、ストリートチューンでは不要なのだろうか。必要か不要かで言えば、純正でも十分な制動力はもちろんある。
しかし、社外キャリパーキットはブレーキタッチが圧倒的に違う。そのタッチの良さから来る運転のしやすさ、扱いやすさはブレーキキャリパー交換チューニングのリピーターを生み出している。
ペダルタッチが良くなりコントロールしやすくなる
ブレーキキャリパーは純正ではほとんどの場合、片押し式。社外キットでは多くの場合で対向ピストン式の構造になり、そのキャリパーは高い剛性を持つ。
剛性が高ければ、ローターを掴んでも変形しにくいため、その分ペダルタッチはカッチリとする。ブレーキペダルが奥に入っていく感覚が減り、極端な話、足でタイヤのサイドウォールを踏みつけているような、圧倒的な剛性感が手に入る。
ペダルが奥に入っていかないとコントロールがしにくくなると思われがちだが、じつは逆。短いストロークのなかで踏んだ分だけ制動が強まるほうが安定して踏みやすい。レーシングカーではその感覚を研ぎ澄ますために、ペダルの取付部周辺に補強を入れてペダル自体が変形しないようすることもあるほどだ。
扱いやすいブレーキは踏むたびに運転が楽しくなる。意のままに減速でき、止めることができる。思い通りにクルマが動かせるようになる快感は、車高調導入やバケットシート導入に近く、ドライバーとクルマが近づく感覚が得られるのだ。
もしサーキットに行くなら、純正ブレーキシステムに比べて社外キャリパーキットは、ローター径も大きくなるのでよく止まることはもちろん、パッドも減りにくい。キャリパー自体もダメージを受けにくく、シールが焼けることも少ないので、オーバーホールの間隔を延ばせるメリットもある。
愛車との相性やバランスを考慮して装着したい
気をつけたいのはブレーキバランスやマスターバックとの相性。フロントキャリパーだけを交換することが多いが、そうなると前利きになりがち。それに合わせてリヤのローター径をアップさせるか、パッドの摩材を変更するなどの対策が必要だ。国内メーカーや、海外製でも日本法人でサポートしているブレーキメーカーであれば、対処法が用意されている。
マスターバックも同様で、むやみにピストン径を増やすと、マスターバックの容量が足りず、利きが甘くなる。こちらもきちんとしたメーカーの車種別キットでは、純正マスターシリンダーに対応した設計になっており、ピストン径が小さく設計されているなど心配はない。
ちなみに社外キャリパーキットに交換することで、ABSを介入させたり解除したりのギリギリの領域でコントロールできるようになり、ABSなしならロック寸前の領域で扱いやすくなる。しかし、制動力を左右するのはタイヤのグリップ力も関係がある。社外キャリパーキットを投入しただけで劇的に止まるようになるとは限らないことをご理解いただきたい。