バネを変えるだけでも車高調の乗り味は激変する
クルマの車高調整式サスペンション、通称「車高調」に使われているバネは「直巻(ちょくまき)」と呼ばれるもので、太さ、長さ、バネレートなど同一の規格に沿って作られている。しかし、それらの数値以外にもそれぞれの特性があるので、違いを見極めてチョイスしたい。
スプリングの硬さを表す「バネレート」
直巻スプリングはIDと呼ばれる太さ(内径)、インチ単位(25mmごと)で作られる長さ(自由長)、そしてスプリングの硬さを表すバネレートという、3つの数値の組み合わせでラインアップされている。よく「何キロ」と言われているのはバネレートのことで、1mm縮むのに何kgの力が必要になるのか、という数値だ。
例えばバネレートが10kg/mmのスプリングに50kgの力がかかれば5mm縮むし、100kgの力がかかれば10mm縮むことになる。
車高調ではこのスプリングを変えることでセッティング変更が可能だ。バネレートが低ければ大きく沈むので、荷重移動を活かして姿勢変化しやすくなる。逆にバネレートが高ければ、同じようにブレーキをしても沈む量が少ないので、クルマの姿勢は乱れにくく安定しやすくなる。
伸縮のしかたを示す「固有振動数」も重要!
だが、バネの性能はそれだけではない。じつはそれに匹敵するくらい大切なのが「固有振動数」だ。初めて目にする人も多いかもしれないが、簡単に言うと、沈んでから反発するまでの時間のこと。固有振動数を数式でいうと「1/2π√k/m」(k:バネ定数、m:質量)で求められる数字になり、1秒間あたりの振動回数を表してHz(ヘルツ)の単位であらわされる。つまりは、固有振動数が多いバネだと縮めたらすぐに伸びようとする。逆に固有振動数が少ないバネだと縮んでから伸びようとするまでに時間がかかるというわけだ。
スプリングの固有振動数が少ないとゆったりする。観光バスの乗り心地のようにじわっと沈んで、じわっと戻ってくるようなイメージ。乗り心地としては良く感じやすい。
固有振動数が多いとすぐに反発するので乗り心地はせわしなくなるが、ハンドルを切って素早くクルマが反応するスポーツカー的なクルマでは、そのレスポンスの良さが乗りやすく感じることが多いのだ。
この固有振動数はスプリングの長さと、設計によって変わる。
簡単なのは長さだ。同じメーカー、同じバネレートで、長いスプリングと短いスプリングを比べた場合、長いものは固有振動数が少なく、短いものは固有振動数が多い。
なので、乗り心地をもっとソフトにしたいなら長いスプリングをチョイス。もっとクイックにクルマを動かしたいなら短いスプリングをチョイスする、といったセッティングができるのだ。