同じに見えるアルミホイールも構造ごとに魅力がある
ホイールの構造には「ワンピース」、「ツーピース」、「スリーピース」がある。軽さや強さならワンピースが優れるが、ツーピースやスリーピースの「マルチピース」にもそれぞれの魅力と特徴があるのだ。
軽さと強度のバランスなら「ワンピース」がピカイチ
ホイールの構造にはおもに3種類ある。それが1~3の「ピース」というやつ。これはホイールがいくつの構造体で出来上がっているかを示すものだ。
ワンピースはもっとも主流なもので、ひとつのアルミの塊でホイールとしての形をなしている。このひとつの塊を作る方法はいくつかある。
鋳造製法というのは、溶かしたアルミを型に流して固める方法。いわゆる鋳物で大量生産しやすく、こまかなデザインも作りやすいので、凝ったモデルでも比較的安価に作ることができる。
対する鍛造製法は熱したアルミの塊を押しつぶす製法。アルミを押しつぶすことで繊維方向が揃って、素材自体に粘りが出るので薄くできる。鋳造と同程度の強さを持ちつつ、軽く仕上げることも可能だ。デメリットは1本ずつ潰さなくてはいけないのでコストが掛かること。さらに細かなデザインは、あとで切削加工が必要になる。
なかには、製造過程の最初はデザイン無しで単純にアルミを押しつぶして、いわゆる鉄チンホイールのようなものを作り、そこに穴を開けてスポークにしていくこともある。こうなるとデザインの自由度は高まるが、切削加工の手間が掛かるのでこれまたコストが掛かるのである。
インセットを変えられるドレスアップ向きの「ツーピース」
ツーピースはリムとディスクが別にできているタイプのホイールのこと。代表的なモデルで言うと「BBS LM」のようなもので、リムとディスクをピアスボルトで固定している。ボルトでの固定部が必要になったり決して軽量にはならないが、ディスクとリムの組み合わせを変えるとインセットを変えることができるので、オーダーインセットなども比較的簡単にできる。
そのためドレスアップ系などでツライチを求めて究極のインセットにする場合に、ホイールメーカーに自分だけのインセットを特注することも可能だったりするのだ。
現代ではそういったドレスアップやストリート用として使われるが、もともとはレースで使われていた。セッティングのひとつとして、ホイールのインセットやリム幅を変えられるように生まれたものなのだ。たしかに1980年代のレース「グループC」では、多くのクルマでツーピースのホイールが使われていた。
ラグジュアリーな演出ができる「スリーピース」
ツーピースのイン側のリムとアウト側のリムをさらに別のパーツとして独立させたのがスリーピースと呼ばれるもので、さらに細かいインセットを選びやすくなる。
ツーピースやスリーピースはこれまで剛性が低いとか、重いとか言われてきたが、リムを鍛造しているホイールが増え、ひと昔前に比べて軽いモデルも増えてきた。また、ボルト留めではなく溶接してリムとディスクをつなぐツーピースモデルも存在するのだ。
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ディスクとリムをつなぐ「ピアスボルト」がデザイン的なアクセントとして人気があり、最近ではピアスボルト風デザインを採用したワンピースホイールもあるほどだ。深いリムの奥にディスクがあるデザインは、やはり奥行きが出るため、クルマの足元の表情に深みが出る。そういった意味でツーピースやスリーピースモデルも強い人気を持っているのである。