英国の老舗商用車ブランドのバンを元にしたキャンパー
イギリスのベッドフォードシャー州に拠点があったことから、その地名にちなんだ社名を持つ商用車専業メーカーが「ベッドフォード」だ。ボグゾールの商用車部門のブランドとして知られた同社の設立は1931年。一時期は世界有数の商用車ブランドとして知られたベッドフォードの、小さなバンをベースに生み出されたキャンパーを紹介しよう。
かつて英国内で長く愛されていた「はたらくクルマ」
1903年創業の英国の老舗高級車メーカー「ボグゾール」は1925年に経営難から、英国進出を目論んでいたアメリカのゼネラルモーターズ(GM)に買収されたが、当のGMはすでに英国内の別工場でシボレーのトラックを生産していたので、それらを整理・統合したかたちで1931年に生まれたのが「ベッドフォード」だ。やがて同社は英国を代表する商用車メーカーへと成長する。
戦時中は軍用車両の生産に追われたベッドフォードだったが、戦後になるとふたたび民生用の商用車の生産を再開する。なかでも小型のルートバンとして開発された「ベッドフォードCA」は英国内で大きな成功を収め、1952年から1969年にわたり生産されるロングセラーとなった。これは現在のわが国で例えるならば、トヨタの「クイックデリバリー」のような身近な存在だったのではなかろうか。
ベッドフォードCAの左右ドアはスライド式。ストップ&ゴーを繰り返す街中での配送業務にも適した設計だ。短いボンネットのセミ・キャブオーバー型で、メンテナンスはそのボンネットと、車室内のメンテナンスカバーの双方から手を入れて行う。エンジンは同時代のボグゾール「ビクター」などと共通の1508cc、水冷4気筒OHVで駆動方式はFR。機構的には同時代のライバル、ドイツのフォルクスワーゲン「タイプ2」やフランスのシトロエン「Hバン」などと比べ、ごくコンベンショナルであることも英国車らしい。
フロントグリルのリデザインやウィンドウの形状変更、エンジンの改良など、マイナーチェンジを繰り返しつつも、基本設計を変えることなく長いライフスパンを全うしたベッドフォードCAは、戦後イギリスに欠かせない風景の一部となった。