サニーのホットモデル「VZ-R」
1966年にデビューして以来、長きに渡って日産の看板車種のひとつとしてその座を守り続けてきたサニー。残念ながら2006年をもってその40年にも渡る歴史に終止符を打ってしまっているが、サニーと言えば当時の日産の旗艦車種であることと同時に、ホットなモデルが用意されてきたことでも知られている。
初代モデルからモータースポーツにも参戦していたサニーは、FFレイアウトとなった5代目モデルでもターボ仕様をラインアップするなど、つねに何かしらのホットモデルが設定されていたのだ。
もちろん最終型となった9代目モデルにもホットモデルが設定されており、それが今回紹介する「VZ-R」ということになる。
シビック・タイプRをカモれるエンジンを搭載
このVZ-R、ボディこそ通常のサニーと同じ4ドアセダンであるが、その心臓部には1.6Lながら175psを発生するSR16VE型エンジンが搭載されていた。
このSR16VE型エンジンには可変バルブタイミング&リフト機構であるNEO VVLが採用されており、最高出力を発生する回転数はなんと7800rpmという超高回転型ユニット。同型のエンジンを搭載したN15型パルサー&ルキノハッチのN1仕様は、カタログモデルながら1.6Lで200psを発生しており、当時のシビックタイプR(EK9型)を凌ぐポテンシャルを持ったエンジンとなっていたのだ。
組み合わされるトランスミッションは硬派に5速MTのみとなっており、ギヤレシオは通常のサニーのMT車とは異なるクロスしたものが採用されていたほか、向上しているパワーに合わせて4輪ディスクブレーキが採用されていた。
一見普通のサニーに見えるが……
またサスペンションも専用のスポーツ仕様のものが標準装備となり、フロントストラットタワーバーやビスカスLSD、10000回転スケールのタコメーターなど、ホットモデルとして手を加えるべき部分にはしっかり手が入っていたのはさすがといったところだろう。
ただし内外装の仕立てはホットモデルとは思えないほど大人しいものとなっており、エクステリアではブラックアウトされたフロントグリルとリヤのVZ-Rのデカール、そして15インチのアルミホイール程度の違い(一応オプション設定のあるフォグランプとカラードマッドガードが標準ではあったが)。
インテリアも本格的なスポーツシートなどは用意されず、穴あきタイプのヘッドレストと専用のシート表皮、ウッドとレザーのコンビステアリングが備わる程度と、そこまで詳しい人でなければホットモデルとは思えない出で立ちとなっていた。
また、当時のカタログでもVZ-Rについて熱く語っているページはほとんどなかった。当時すでに大幅に高齢化が進んでいたメインのユーザーにはホットモデルを求める層もほとんどいなかったようで、デビューからおよそ2年後の2000年9月に早くもカタログ落ち。総販売台数は300台弱というなんとも寂しい結果となってしまっていた。