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バブル経済の申し子「エスティマ」が起こした革命とは? 当時のトヨタは「セルシオ」も生み出した熱い時代だった!

トヨタ・エスティマのサイドスタイル

ほかのミニバンとは違う次世代の姿を見せようとした

 トヨタの初代エスティマは、1994年にホンダからミニバンのオデッセイが発売される前、ワンボックスのワゴン車が人気の時代に生まれた革新的ワゴン車だった。全体に丸みを帯びた外観の独創性から、天才タマゴと形容された。

 オデッセイに代表されるミニバンと、ワンボックス・ワゴンの大きな違いは、エンジン搭載位置が客室の前にあるか、客室の運転席下にあるかによる。このため、ワンボックス車の構造は、キャブオーバー型と分類される。

 後席や3列目の座席、そして荷室は、車体後方にあるので広々とした空間が得られた。しかし、運転席は、座席下にエンジンを搭載する関係で後席以降の空間とは分離されるように、床が高く持ち上がっていた。

キャブオーバー型ワンボックス車の世界を大きく転換させた

 この弱点を解消したのが初代エスティマだ。大胆にも、運転席下のエンジンを75度横へ傾け、エンジン全高を低く抑えたのである。それによって、前席と後席との段差はかなり抑えられ、前席から3列目の座席まで、ほぼ平らな床を実現できた。その視覚的効果は大きく、2列目や3列目の席に座ったときの贅沢な空間は、キャブオーバー型ワンボックス車の世界を大きく転換させた。

 またそれまでのワンボックス車は、商用バンも同様に製造されたので、生産効率はよいが走行性能などは妥協せざるを得ない面があった。しかし初代エスティマは、乗用車専用で開発されたので、フロントはストラット、リヤはダブルウィッシュボーンのサスペンションを装備し、操縦安定性も乗り心地も一段水準が高く、走行中の静粛性にも優れた。

 そうした独創性を見た目にも表すため、車両全体が丸みを帯びた卵のような造形になり、また運転席は、宇宙船を思わせるような操縦席といった造形がなされた。価値観としては、今日のアルファードのような上級乗用車の世界観があった。

 一方、米国を中心とした衝突安全への規制強化によって、初代エスティマは時代の転換を求められた。また先にも述べたように、オデッセイをはじめとするミニバン時代を迎え、ワンボックス型ワゴン車は消えていくことになる。

 まさにバブル経済の申し子ともいえる初代エスティマであった。それはちょうど、トヨタからセルシオが生まれた時代でもある。

5ナンバーのルシーダ/エミーナも人気だった

 エスティマは消費者の憧れの的となったが、3ナンバー車であったため、販売台数には限りがあった。そこで派生したのが、ルシーダ/エミーナを名付けられた5ナンバーのエスティマ小型版だった。ただしこちらはエンジンを傾けて搭載することはなく、従来通りのキャブオーバー型ワゴン車で、外観のみエスティマを真似た姿だった。それでも、本家エスティマへの憧れが販売台数を稼がせた。

 2代目のエスティマは、ミニバンになった。つまり客室の前にエンジンを搭載する。そして1年後には、ハイブリッド車が追加された。初代プリウスが1997年に発売されて以後、2台目のハイブリッド車(HV)となる。初代エスティマが挑戦した革新的機構とは異なるが、世界的に例の少ないHVを、クラウンやカローラより先に2代目エスティマに追加したことは、エスティマに対するトヨタの挑戦姿勢がまだ消えていないことを明らかにした。また後輪駆動用にモーターを追加した4輪駆動の機構(E-Four)も、2代目エスティマで始まったのである。

 運転席周りの造形も初代の印象を残すことで、ほかのミニバンとは違う次世代の姿を見せようとしたトヨタの思いも伝わってきた。

 3代目で、ハイブリッドシステムはプリウスと同じTHS方式に統一された。トヨタは、初代プリウス以降、クラウンでのマイルドハイブリッドを含め、2代目エスティマでの変速機を併用するハイブリッド方式など、最適なHVの姿を摸索し、試行錯誤し、ここにプリウス方式を核とした統一を見たのである。

 資源を投入して次世代を摸索し、世界を動かそうとする姿が、当時のトヨタにはあった。

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