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LAを出た途端にトヨタ「ハイラックス」がオーバーヒート!? 広大なアメリカは急坂も多いんです──米国放浪バンライフ:Vol.02

1991年式トヨタ「ドルフィン」、愛称は「ドル」

アメリカを気ままに放浪3カ月:初日~2日目

 これまで2度にわたりアメリカを放浪してきた筆者。還暦を過ぎた2022年4月から7月にかけて、人生3度目のアメリカひとり旅にチャレンジしてきた。相棒は、1991年式トヨタ「ハイラックス」をベースにしたキャンピングカー「ドルフィン」。愛称は「ドル」。3カ月にわたる旅路をリアルにリポートする2回目では、いよいよLAに上陸してキャンパーで放浪の旅の第一歩を走り出すのだ。

4月30日 ロサンゼルスで「ドル」と対面

 2022年4月29日、たっぷりの旅行道具を携えてLA空港に到着した。なにしろ、最長3カ月の旅を予定している。あれやこれやを想定すると荷物も多くなる。しかし、なぜ航空チケットがひときわ高いゴールデンウィーク初日に出発することになったかといえば、最初の1週間だけ、ぼくの妻が同行することになったから。今年は祭日の並びがよく、1日だけ休めば(5月1日はメーデー)9連休になるというサラリーマンの理論が幅をきかせることとなった。

 翌日、いよいよキャンピングカー、トヨタ「ドルフィン」とのご対面である。さんざんお世話になりっぱなしのAKIRA隊長&MAYUMIさんご夫妻と一緒に、オレンジカウンティにあるMAKOTOさんのお店「Road & Sky」へと向かった。

 初対面の「ドル」(車名からシンプルに命名)は、ややはにかんだ様子でぼくたちを待っていた。30年前のクルマだけにボディはかなりヤレているが、個人的にはけっこう好み。クラシックなスタイルで旅をしたい身としては望むところだ。

いよいよ出発! まずはパームスプリングスへ

 挨拶も早々に、MAKOTOさんからキャンパーの使用法について説明を聞く。本格的なモーターホームを所有するのは初めてなので、電気、水、プロパンガスなどの切り替えや補充についてはとくに詳しく説明してもらった。

 クルマ自体の状態も重要だ。Road & Skyに入庫してから約1カ月。スモッグチェック、タイヤ交換、効かなかったエアコンなどを整備してもらったおかげで、ほぼ完璧な状態で乗り出すことができる。その後、最低限の工具や足りなかったフックアップ用のホースなどの買い物につき合ってもらい、Road & Skyを出発したときには、すでに17時半を回っていた。

 最初の目的地はロサンゼルスから東へ100マイル(約160km)ほどのパームスプリングスとジョシュアツリー国立公園だ。快調に時速60マイル(約96km/h)でフリーウェイを走行する。期待以上に調子がよく、ドライブが楽しい。MAKOTOさんが「エアコンもガンガン効きますよ」と言うとおり室内も快適だ。ただ、キャンパーが重いため、少しでもクイックにハンドルを操作するとフラッと揺れるが、そのクセもしばらくするとつかめるようになった。

4月30日 不調を感じながらバニングに投宿

 様子がおかしくなったのは、出発して1時間ほど経ったときだった。登り坂で踏みごたえがあやしくなり、水温が高くなってきた。2004年の「放浪記第1章」では、オーバーヒートでガスケットを吹っ飛ばしてクルマを壊してしまった。あの嫌な思い出が脳裏をかすめる。エアコンを切り、速度を50マイル(約80km/h)に落とす。ビュンビュンと追い越されるが、そんなことを気にしている場合ではない。

 妻は翌日に予定しているパームスプリングスの市内観光について呑気に話しているが、こちらは次第に余裕がなくなってきた。腹が減ったのを口実に、目的地より手前のモーテルに泊まることを提案する。翌日から2日間はフルフックアップ(キャンピングカー用の電気や水が完備)のキャンプ場を予約したが、クルマをピックアップした当日はどうなるか分からなかったので、この日の宿は未定だったのだ。

 パームスプリングスから20マイル(約30km)ほど手前のバニングという町でフリーウェイを降りる。目についたデイズイン(モーテルのチェーン)に乗り入れると、なんと190ドルだという。このときの為替レートで約2万5000円である。土曜の夜というのを考慮しても、近年のモーテル代の高騰は異常だ。かつては、40~50ドルで泊まれたのに……と、恨み節を唸っていても仕方ない。慌てて、「Booking.com」でリサーチし、なんとか2万円のトラベロッジ(これもモーテルのチェーン)に投宿した。

5月1日 エアリアル・トラムウェイにどうにか辿り着く

 翌朝、「ドル」の始業点検をすると、ラジエターのリザーバータンクには問題ないが、オイルが下限ギリギリになっている。MAKOTOさんに報告すると、粘度5W30のオイルを足しておくようにとの指示。最寄りのガスステーションでエンジンオイルを購入、すぐさま補充した。昨日のことが幻だったことを祈りつつ、パームスプリングスへと向かう。

 まず目指したのはエアリアル・トラムウェイだ。約2600mの高山地帯まで一直線に登るロープウェイで、終点からはチノバレーの雄大な景色を見下ろすことができる。パームスプリングス観光では、一番の人気アトラクションだ。

 ところが、である。トラムの乗り場までも、ほぼ垂直に思えたほどの急な登り坂だったのだ。時速30マイル(約32km/h)が20マイルになり15マイルになり、ついにヨタヨタ状態に。水温はグイグイ上がる。後ろにはクルマが連なっている。

 途中で道を譲ろうにも、そんな場所はない。妻は相変わらず呑気な話をしているが、どうしようもなくなり絶望的な気持ちでアクセルを踏む。そして、水温計の針がレッドゾーンに触れそうになったとき、ついに料金所のゲートが見えてきた。助かった! ぎりぎりセーフ!

 息も絶え絶えにキャンパーを止めると、「どうしたんだい」と料金所からレンジャーが出てきた。「オーバーヒートなんです」ぼくは水温計を指さした。「一般のクルマでもオーバーヒートするからね。一番下の駐車場に止めるといいよ」と、すぐ先に見えるパーキングを示してくれた。まだ、朝の時間帯なので、半マイル(約800m)先のロープウェイ乗り場に一番近い駐車場だけがオープンしているのだった。

「ぼくも同じ1991年のドルフィンを持ってるよ。ぼくのは絶好調だけどね」レンジャーが、悪戯っぽくウインクした。

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