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スーパーカー世代のF1といえば6輪「ティレルP34」でキマリ! なぜ6輪を採用し消えていったのでしょうか

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

熟成に手間取った面もあったがタイヤ開発の遅れが響いた

 ティレルP34は、アルミパネルで構成されたツインチューブの3/4モノコックに、フォード・コスワース製で3L V8のDFVユニットを搭載。後方にはヒューランド製の縦置き5速ミッションが組み付けられていました。

 サスペンションは前後ともにダブルウィッシュボーン式で、リヤはアッパーがIアーム、ロワーがパラレルのIアームで、上下一対のラジアスロッド付き。フロントはアッパーがIアーム+トレーリング/リーディング・アームでロワーがAアームと、極めてコンベンショナルなパッケージでした。

 ただフロントが4輪であることを除けば(!)、そのフロントサスペンションは左右が対称とされただけでなく、前側と後ろ側をも対称……メインのIアームに前側はトレーリング・アームを、後ろ側はリーディング・アームを組み合わせていました。

 操舵機構はさぞや複雑に、と心配されましたが、ステアリングロッドは前側のハブに繋がり、後ろ側のハブは前側のハブとベルクランクで繋ぐシステムが考案されました。トップスピードのアドバンテージを築くために空気抵抗を低減しようと考えられたシステムですが、フロントタイヤによるエアフローの乱れが小さくなり、リヤウイングの空力効果が高まるということも狙っています。

 こちらは狙い通りだったのですが、接地面積を稼ぐためにフロントを4輪にしたことで、制動力が大きくアップしたのは予想した以上の効果があったようです。

 時代に恵まれなかった……についても説明しておきましょう。タイヤが細く、トレッド面には溝が彫られていたころから、F1GPにはいくつものタイヤメーカーが参戦していました。それが1970年代になるとグッドイヤーの独壇場となっていきます。そうなるとタイヤメーカーの方でも必要以上のタイヤ開発を控えることになります。

 しかし、1970年代終盤になるとミシュランが本格参戦に名乗りを挙げます。後発組のミシュランとしては、王者グッドイヤーにひと泡吹かせようと開発が急ピッチで進んでいきました。こうなると当然ですが、グッドイヤーもより高性能なタイヤを目指して開発を進めていったのです。

 両タイヤ陣営と、それぞれに属するチームがイコールコンディションならば、これは面白い展開が期待できるのですが、この場合、ティレルにとってはとても厳しい現実が待っていました。グッドイヤーが開発に際してリヤの13インチに加えてフロントも13インチのタイヤのみを開発し、ティレル専用だった10インチのフロントタイヤは、開発の波から取り残されてしまいました。

 もちろん勝つための開発で、しかも開発のリソース(予算と人手)は限られていますから、ティレル専用のフロント用10インチタイヤが開発から取り残されたとしても、グッドイヤーを責めることはできません。1977年シーズンにティレルP34の成績が急降下したのには、そのような理由があったのです。

 ちなみに、フロントのグリップ不足に対処しようとトレッドを拡幅したテストも行われたようですが、トレッドを広げたことでフロントタイヤがスポーツカーノーズの横からはみ出てしまい、好結果にはつながらなかったようです。

 マーチやブラバムなども6輪車のテストをしていましたが、ルールが改正されてタイヤは4輪に限る、と明文化され、P34は活動を1977年限りで休止。ティレルも1978年に向けては4輪の008を製作していました。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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