5月6日 ロサンゼルスへ出戻り。メカニックの診断結果は?
5月6日、午前4時半にジョシュアツリー国立公園内のキャンプ場を出発。夜明けのフリーウェイを一路、ひた走る。無事に帰れるか不安だったが、拍子抜けするほど順調にトーランスの修理工場に到着してしまった。
大雑把にいえば、帰り道の100マイル(約160km)は長~い下り坂。逆にいうなら、往路は長大な上り坂だった。「ドル」は前オーナーの元で、数年間、引退生活を送っていた。いきなりクーラー全開でぶっ飛ばしたため、びっくりしたのかもしれない。
MAKOTOさんがアレンジしてくれたのは、I.P.M.という修理工場。社長のTOYAMAさんは、ロサンゼルスに来て20年以上というベテラン・メカニックだ。クルマ関係の工場が密集する、いわゆる自動車団地の一角でビジネスを営んでいる。
ぼくが症状をくわしく説明すると、「うんうん」と頷いたTOYAMAさんが運転席に乗り、ブウ~ンとアクセルをふかす。と、次の瞬間、TOYAMAさんの顔色が変わった。「お、これは……」。さすがベテラン、アクセルをふかしただけでトラブルが分かったのか!?
さらにアクセルを踏む。ブウ~ン、ブウ~ン。そして、一言。「エンジンの調子は悪くないですね」「え!」「これは後ろのキャンパーが重いだけですよ。エンジンの調子は完璧です」。つまり、坂を登らないのも、水温が上がるのも、「正常な症状」なのだ。
日本の軽自動車はアメリカの通人にも人気
その後、ぼくが助手席に乗り、フリーウェイを試走してみたが、TOYAMAさんの診断は変わらなかった。「できることは、電動ファンをつけるか、サーモスタットを取っちゃうことです」。サーモスタットは、雪国など寒冷地でエンジンを始動するときに冷却水を温める仕事をしている。それを外してしまえば、水温はつねに低いままに保たれることになる。
「まずは、水とオイルが十分に入っているか、始動点検をしっかりしてください。あとはクルマとうまくつき合うことですね」。とりあえずはこのまま乗ることにして、ぼくたちはI.P.M.を後にした。
ところで、TOYAMAさんだが、趣味を兼ねて日本の軽自動車をアメリカに輸入するという変わったビジネスをしている。I.P.M.のサービスカーはアルト・ウォークスルーバンで、なんとスライドドアを自動ドアに改造していた。さらにホンダ・ライフ、ダイハツ・ミジェットなど、変わり種がガレージにずらっと入っている。「けっこう、欲しいっていう人が多いんですよ」軽自動車の話になった途端、少年のように目が輝いたのが印象的だった。
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