サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

トヨタ「ハイラックス」キャンパー不調の原因は? ジョシュアツリー国立公園から振り出しのLAへ出戻りです──米国放浪バンライフ:Vol.03

国立公園内のキャンプサイト。1泊15ドル

アメリカを気ままに放浪3カ月:3日目~7日目

 これまで2度にわたりアメリカを放浪してきた筆者。還暦を過ぎた2022年4月から7月にかけて、人生3度目のアメリカひとり旅にチャレンジしてきた。相棒は、1991年式トヨタ「ハイラックス」をベースにしたキャンピングカー「ドルフィン」。愛称は「ドル」。ロサンゼルスを出てジョシュアツリー国立公園まで行きましたが、オーバーヒートの不安が付きまといます。さてどうしたものか……。

5月2日~5日 幻想的な風景が広がるジョシュアツリー国立公園

 一般的には「砂漠」といえば、どこも同じと思うだろうが、アメリカには4つの異なる砂漠がある。それぞれに気候が違い、植生も違う。例えば、西部劇に出てくる大きなサワロ・サボテンはアリゾナ州に広がるソノマ砂漠でしか見ることができない。

 ジョシュアツリー国立公園のユニークな点は、東に低くて乾燥したコロラド砂漠、西に高地で比較的涼しいモハべ砂漠が接している点だ。つまり、砂漠の境界線が存在する。公園内を東西にドライブしていると、植物の種類が劇的に変化するのを体感することができる。

 キャンプも自然もまったく興味がないシティ派の妻ですら、「さっきまでのチビサボテンがなくなって、おかしな形のヘンテコサボテンが増えてきた」と、うれしそうにスマホのカメラを向けるほどだ。なかでもユッカの仲間で木の大きさにまで成長するジョシュアツリーは、モハべ砂漠のシンボルともいえる存在。サンセットに浮かぶ幻想的な姿は見ていて飽きることがない。

 もうひとつの特徴が巨大な奇岩群だ。にわかに信じがたいが、この砂漠の一部はかつて大きな河の底だった。激しい流れで浸食された岩が、その後の地殻変動で隆起してむき出しに。この岩はロッククライマーたちの格好のターゲットにもなっている。奇岩と幻想的なサボテンがつくる異空間のトレッキングは衝撃の連続だ。

オーバーヒートの不安を解消すべく旅程を変更

 さて、息も絶え絶えになっていた相棒のキャンピングカー「ドル」である。クルマ探しから手続きまでお世話になったMAKOTOさんにオーバーヒートを連絡すると、「そうですかぁ」と、ぼく以上に落胆した様子。少なくともこのままでは、予定している旅の続行は不可能だ。ぼくのライフワークである国立公園を訪ねる旅は、山また山の道程が避けられない。ともかく、ジョシュアツリーの観光が終わったら、ロサンゼルスに戻ってMAKOTOさんの知り合いのメカニックにチェックしてもらうことにした。

 それにともなって、旅行の計画も変更になった。当初の予定では5日目にAKIRA隊長夫妻と合流して、ボラゴ・スプリングスという景勝地に案内してもらうはずだった。ところが、宿泊するキャンプ場がかなりの高地にあり、辿り着けないのではないか、というのだ。

 さらに、5月6日にPCR検査、7日帰国予定の妻をAKIRA隊長に託して、ぼくはひとりで東へ向かうはずだったが、当然、この都合のいい計画もおじゃんになった。結局、国立公園内での滞在を1泊延ばし、自力でロサンゼルスまで帰ることにした。

5月6日 ロサンゼルスへ出戻り。メカニックの診断結果は?

 5月6日、午前4時半にジョシュアツリー国立公園内のキャンプ場を出発。夜明けのフリーウェイを一路、ひた走る。無事に帰れるか不安だったが、拍子抜けするほど順調にトーランスの修理工場に到着してしまった。

 大雑把にいえば、帰り道の100マイル(約160km)は長~い下り坂。逆にいうなら、往路は長大な上り坂だった。「ドル」は前オーナーの元で、数年間、引退生活を送っていた。いきなりクーラー全開でぶっ飛ばしたため、びっくりしたのかもしれない。

 MAKOTOさんがアレンジしてくれたのは、I.P.M.という修理工場。社長のTOYAMAさんは、ロサンゼルスに来て20年以上というベテラン・メカニックだ。クルマ関係の工場が密集する、いわゆる自動車団地の一角でビジネスを営んでいる。

 ぼくが症状をくわしく説明すると、「うんうん」と頷いたTOYAMAさんが運転席に乗り、ブウ~ンとアクセルをふかす。と、次の瞬間、TOYAMAさんの顔色が変わった。「お、これは……」。さすがベテラン、アクセルをふかしただけでトラブルが分かったのか!?

 さらにアクセルを踏む。ブウ~ン、ブウ~ン。そして、一言。「エンジンの調子は悪くないですね」「え!」「これは後ろのキャンパーが重いだけですよ。エンジンの調子は完璧です」。つまり、坂を登らないのも、水温が上がるのも、「正常な症状」なのだ。

日本の軽自動車はアメリカの通人にも人気

 その後、ぼくが助手席に乗り、フリーウェイを試走してみたが、TOYAMAさんの診断は変わらなかった。「できることは、電動ファンをつけるか、サーモスタットを取っちゃうことです」。サーモスタットは、雪国など寒冷地でエンジンを始動するときに冷却水を温める仕事をしている。それを外してしまえば、水温はつねに低いままに保たれることになる。

「まずは、水とオイルが十分に入っているか、始動点検をしっかりしてください。あとはクルマとうまくつき合うことですね」。とりあえずはこのまま乗ることにして、ぼくたちはI.P.M.を後にした。

 ところで、TOYAMAさんだが、趣味を兼ねて日本の軽自動車をアメリカに輸入するという変わったビジネスをしている。I.P.M.のサービスカーはアルト・ウォークスルーバンで、なんとスライドドアを自動ドアに改造していた。さらにホンダ・ライフ、ダイハツ・ミジェットなど、変わり種がガレージにずらっと入っている。「けっこう、欲しいっていう人が多いんですよ」軽自動車の話になった途端、少年のように目が輝いたのが印象的だった。

■「米国放浪バンライフ」連載記事一覧はこちら

モバイルバージョンを終了