カップルにおすすめのモデルを紹介
気温が安定し、暑くも寒くもない秋は、紅葉の景色の中を泳ぐような絶景ドライブはもちろん、車中泊にもうってつけの季節となった。車中泊をするのに相応しいクルマのなかでも、価格、維持費面で有利なのが、軽自動車。
「えっ、あの小さな軽自動車で車中泊なんかできるの?」なんて思っている人は世間知らず!? 軽自動車といってもホンダ「N−BOX」やスズキ「スペーシア」に代表されるスーパーハイト系や、維持費がさらに安くなる、ホンダ「N−VAN」などが揃う4ナンバーの商用軽なら、軽キャンピングカーのベース車両にもなっている。それだけに、車内も広さ、天井の高さ、フルフラットアレンジのしやすさは、それこそコンパクトカーなど敵にならないほどの驚くべきレベルにあるのだ。
チェックするべきポイントは4つ!
ここでは、人肌が恋しくなる季節に、カップルで”どこでもラブホ”感覚の快適な車中泊が楽しめる、走るベッドルームになりうる軽自動車を紹介したい。
チェックすべきポイントは以下の4つ。
①十分な車高、室内高があること
②フルフラットアレンジが可能であること
③純正、または車外品の車中泊用アイテムが豊富に揃っていること(マットレスとプライバシーカーテンは必須)
④遠出も可能な走行性能を持ち合わせていること
①の条件を満たすには、ハイトワゴン、スーパーハイト系軽自動車ということになる。フルフラットアレンジができたとしても、寝ているときだけでなく、お座敷感覚で寛ぐために、あぐらをかくような姿勢でも、天井が低いと感じにくい室内高が不可欠だ。
②のフルフラットアレンジは、厳密にはシートをアレンジする条件下では、かけ心地を重視したシート形状のため、凸凹ができてしまうのが普通。そこで③の純正、または車外品のベッドキット、クッションが不可欠なのである。
そして、多くの場合、車中泊を楽しめる環境は、自宅から遠いことがほとんど。高速道路を使うケースが多いはずだから、クルマの不足ない動力性能、快適性が求められるのだ。ただ、今回はカップル限定だから、ターボでなく、NAエンジンでもトルクに余裕があり、静かに巡行してくれるクルマならOKではないだろうか。
では、具体的な車種をピックアップしていこう。
スズキ・ハスラー
まずはスズキのハスラーだ(NA、ターボエンジンあり)。いわゆるスーパーハイト系軽自動車でもなく、両側スライドドアを備えているわけではないハイトワゴン系クロスオーバーモデルなのだが、じつはSUV並みの走破性と、車中泊に対応した室内パッケージの持ち主なのである。
フルフラットアレンジは、前席のシートバックをほほ水平に倒して後席とつなげるアレンジになるのだが、その全長、いやベッド長は2040mmに達する。後席のシート幅基準でベッド幅を見れば1090mmもあり、一般的なシングルベッドのサイズである長さ1950mm×幅970mmを凌ぐベッドサイズが確保できるのだ。
シングルベッドにふたりで寝る、筆者も若いころは彼女とそんな経験をしたことがあるが、人肌恋しい季節にはうってつけのサイズ感、ふたりの距離、密着感と言っていい。室内高も十分にあり、お座敷としても使える。そしてリラックスクッションなる1枚が全長2100mm、幅540mm、厚さ20mm(ロール状に畳むと直径約240mm)のベッドマットレスが純正用品として用意されているから文句なし。
タープなどもあるから、純正アクセサリーだけでもアウトドア、車中泊に対応できるというわけだ。遠出前提ならターボモデルを推奨するが、2名乗車ならNAでもけっこうよく走ってくれる。
乗り心地の良さは今でも軽自動車最良の1台と言ってよく、実際に東京~軽井沢のドライブもストレスなくこなしてくれたほどである(ターボ)。
ホンダN-VAN
ホンダの商用軽のN−VAN(NA、ターボあり)も車中泊に適している。基本的には働くクルマとして開発されているから、簡易シートの後席はもちろん、前席も商用車然としたかけ心地なのが惜しいものの、車内のフルフラットアレンジ性はピカイチだ。
助手席&荷室フラットモードにアレンジすれば、助手席側で全長2560mm(スタイル)、運転席をそのままにした運転席側で全長1585mmの凸凹のないベッドスペースが誕生。
室内高の高さもあって、天井方向にも余裕たっぷりのベッドルームに変身させられるのである。純正アクセサリーのマルチボードを使えば、ベッド下に大容量の収納が出現する。
車内用カーテン、車外用カーテンなど豊富なアウトドア&車中泊用アクセサリーが用意されているし、車外品も選び放題だ。ターボモデルを選べばそれほどのストレスなく遠出ができるだろう。ただ、前席のかけ心地はN−BOXやハスラーなどとは違い、くどいようだが商用車そのものだから、要チェックではある。
スズキ・スペーシア ベース
軽商用車の話が出てきたところでズバリ今、アウトドアや車中泊にぴったりの軽商用車として推奨したいのが、スズキのスペーシア ベース(NAエンジンのみ)。
4ナンバーの軽商用車でありながら、ボディや足まわりはスペーシアほぼそのもの。顔はMC前のスペーシアカスタム、しかもそのフロントグリル、フォグランプベゼル、ドアミラー、ドアアウターハンドル、リヤガーニッシュ、ホイール(XFグレード)が贅沢にも上級感あるブラックパール塗装され、スペーシアギア用のルーフレールまで標準装備されているのだから、まるでカスタムしたかのようなエクステリアデザインなのである。
インテリアでは、例えばスーツケースをモチーフにしたインパネなどはスペーシアそのもの(色使いが異なるだけ)。しかし、前席はスペーシアのセミベンチシートではなく、よりパーソナル感あるセパレートシートを採用。シート表皮はスペーシアギア用の撥水生地となっている。
後席は4ナンバーの商用車ということで簡易シートになるものの、カップルユースなら関係なし。しかも標準装備の、上中下段、および縦にもセットできるマルチボードと畳んだ後席を組み合わせれば、車内が窓際のカフェスペース(席)に大変身だ。
さらにスペーシアにないリヤクォーターポケット、オーバーヘッドシェルフはカップルでイチャイチャする際にも小物入れとして威力を発揮。車内で横になれるだけじゃなく、立派なふたりだけのプライベートルームになる仕立てなのだからたまらない。
肝心のベッドスペースは、マルチボード下段の状態からフラットに続く格納した後席~背もたれをほぼ水平に倒した前席までの長さ、いやベッド長は1740mm。ハスラーにも使える純正のリラックスクッションを敷けば、寝心地のいいベッドスペースにアレンジできるのである。2022年8月に発売されたばかりだが、これから車外品のアウトドア、車中泊アイテムが続々登場するはずである。
なお、スペーシア ベースの純正アクセサリーには、すべてのウインドウを覆ってくれる、車内でイチャイチャしやすいプライバシーシェード、ふたりのスペースを車外にまで広げてくれるカータープ、LEDランタン、そして車外からAC100V/1500Wの電源を車内に引き込める外部電源ユニットまで用意されているのだから、自宅の駐車場、あるいは電源付きのキャンプサイトなどで威力を発揮する。
ここまで紹介してきたように、走るベッドルームとしてはもちろん、テレワークにも最適な1台と言えるのが、スペーシア ベースなのである。エンジンは非マイルドハイブリッドのNAのみだが、これがじつにトルキーによく走り、巡行時はそこそこ静かだから、カップル乗車であれば遠出も無理はない。
このほかにも、ホンダN-BOX、スズキ・スペーシアギア、ダイハツ・アトレーなどが、純正、または車外品の車中泊用アイテムが豊富に揃う、軽車中泊カーのベース車として使いこなせる車種になるだろう。