ちょうどいいSUVの「T-Roc」にハイパフォーマンスモデル「R」が追加
フォルクスワーゲンのSUV三姉妹の真ん中、「T-Roc(ティーロック)」。じつは最初に試乗したときから、わりと好感を抱いてた。ゴルフよりちょっとだけ大きい程度の扱いやすいサイズで、スタイリングもクーペ・スタイルをとりながらもやり過ぎない加減の穏やかさを見せるし、適度に穏やかで適度に力強い加速力も、自然に気持ちよく曲がってくれるハンドリングも、電子のチカラを借りなくてもほどよく快い乗り心地も、わりといいんだよな、なんて思ってた。色々なモノが余ってるわけじゃないけど何かが足りないわけでもなく、ちゃんと満たされていて、無理な背伸びもしていない。なんだか自然でバランスのいいクルマだな、と感じてたのだ。
ところが、だ。T-Rocにマイナーチェンジが行われたと同時に、「R」の名を持つハイパフォーマンスモデルが追加された。300psに400Nmを発揮する2L直4ターボ、フルタイム4WDの4MOTION、そして可変ダンピング機構を持つアダプティブシャシーコントロール。もしかして、「T-Roc R」ってちょっと背伸びしちゃったモデル? と、どことなく気になるのも当然の話だろう。
T-Roc全体の質感と先進機能がアップデートされた
マイナーチェンジのポイントは、大きく言うなら3つ。まずはフェイスリフトだ。一見それほど大きく変わってないように思えるが、標準的なT-Rocはフロントにもアンダーガード風のモールが備わってクロスオーバーSUV風味が増してるし、「Rライン」は各部がブラックアウトされて精悍な印象を見せている。T-Roc Rは左右ヘッドランプ下のインテークが拡大されるなどで、アグレッシブなイメージを手に入れている。ほかにもリヤのウインカーがいわゆる「流れるウインカー」になってたりもするが、いずれのモデルも評判のよかった先代のイメージから大きく外れない範囲で巧みにルックスを磨いたといった印象だ。
ふたつめはインテリアとインフォテインメントシステムの改良。僕はそう感じてはいなかったのだけど、先代のインテリアはクオリティにまつわる評価が低かったと聞いたことがある。今回からはステッチの入るソフトタッチな素材が投入されるなどで、質感を高めているように見える。先代のカジュアルで楽しげな雰囲気はだいぶ薄らいで、なんだかちょっとフツーのドイツ車っぽくなったようにも見える。
インパネ中央のディスプレイがダッシュボード上部に飛び出したことも、室内のイメージがガラッと変わったように感じられる一因だろう。T-Roc R以外はこれまでと異なりナビゲーションシステムが標準装備から外れ、スマホとのリンク機能を持つインフォテインメントシステムへ変更された。
そしてみっつめはADAS(先進運転支援システム)の全車共通標準化で、どのグレードであってもアダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストシステムを組み合わせた全車速対応の「Travel Assist」が標準で備わるようになった。
新しいディスプレイのタッチパネルは反応がいいし位置的にも視認しやすいし、ADASの充実は安全面にも寄与するわけだから、歓迎すべきだろう。が、マイナーチェンジとしては大きなニュースとは言いがたい。今回の最大のトピックであるのは、間違いなくT-Roc Rがラインアップされたことにある。