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ポルシェ「マカン」に迫るVW「T-Roc R」登場! 300馬力の「R」と150馬力の「TSI Style」を乗り比べた結果は?

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: 神村 聖

速くて快適な背の高いGTカーに仕上がった「R」

 エンジンを始動してみると、サウンドは同じガソリンの1.5L直4ターボと較べて、明らかに野太い感じ。その力強い印象はスタートしてからも変わらず、発進直後のごくごく低い回転域から豊かなトルクを提供してくれる。それもそのはず。2000回転から5200回転の間で絶え間なく400Nmの最大トルクを発揮し続けるのだ。街中であろうがどこであろうが、扱いにくいわけがない。なので湘南の海沿いののんびりしたペースでも、高速道路に入ってからの巡航でも、じつに扱いやすいし頼もしい。

 でも、それはそれだ。アクセルペダルをグイと踏み込んでいくと、予想してたよりも強烈な加速感と気持ちのいい伸びを味わうことができる。0-100km/h加速タイムは4.9秒。これはポルシェの「マカンS」にコンマ1秒負けてるに過ぎない。そのフィールは胸がすくといっても過言じゃないレベルで、得られるスピードもにもまったく不満なし、である。わずかに横Gがかかった状態で痛快に加速していってもまったく挙動が乱れる気配がなかったのは、リヤのサスペンションがマルチリンク式に変更されていて、さらには4MOTIONの駆動力の配分が巧みだからだろう。

 今回の試乗ルートにはワインディングロードらしいワインディングロードがなかったのは残念だけど、数限られたコーナーでハンドリングをいろいろ試してみると、その曲がり方はリヤからのキックも感じられるちょっと後輪駆動寄りなテイストであるように感じた。ごく軽いアンダーステアを見せながら結構なスピードで曲がっていく様は、まさしくハイパフォーマンスグレードを標榜するにふさわしい。楽しいか楽しくないかと問われたら、間違いなく楽しいと答える。

 それでいて、乗り心地が望外に良好だったのには感心させられた。シャシーは締められていて40扁平の19インチタイヤを履いているというのに、ときどきタイヤの硬さを感じることはあるもののサスペンションそのものはしっかり上下に動いてる感触を伝えてきて、硬いことは硬いのだけど不快感は微塵もない。アダプティブシャシーコントロールを「コンフォート」に切り換えれば、スタンダードT-Rocと同じくらいの乗り心地、である。長距離でも疲れは少ないそうだから、速くて快適な背の高いGTカーとして活躍してくれることだろう。

ゆったり穏やかな1.5Lモデルもまた心地よい

 うん。これはこれでいい。よくできてる。──と、そんなふうに思いながら、ガソリンの1.5L直4ターボに乗り換えた。150psに250Nmで、前輪駆動で、サスペンションに電子制御は備わらない。そういう意味では明らかに見劣りする。けれど、劣ってる感じはまったくしなかったのだ。いや、速さだとかスポーツ性だとか、そういう点では較べるべくもない。ただ、穏やかなエンジンサウンドを耳にした瞬間からスピードへの欲求というか刺激を求める気持ちというか、そういうものが気持ちからスルッと滑り落ちる。穏やかな心持ちになってゆったりクルージングしていると、なんだか軽く癒されたような気分になってくる。

 SUVというカテゴリーのクルマをどう捉えるのかにもよるのだろうけど、僕自身はSUVには目を見張るようなスピードはいらないと感じてるし、ゆったりした気分で走るのが似つかわしいこっちの方が好きだな、なんて思えたのだ。それにT-Roc Rよりも200万円以上も安いのだから、なおのこと……。

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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