ミニカーはオトナも楽しめる趣味の世界
年季の入ったクルマ好きであれば、まだ免許も実車も手にできない少年時代からミニカーやプラモデルで空想のドライブを楽しんできたことだろう。そして、免許も実車も手に入れたオトナにとっても、クルマのミニチュアモデルとは「実車を手に入れたから卒業」するものではなく、じつは自分の趣味趣向を再確認するための素敵な趣味なのだ。
量産ミニカーの頂点に位置するのが「1/12スケール」
ミニカーを含め、ミニチュアモデルは実物をスケール・ダウンして再現するわけだが、その縮尺にはいくつかのクラスがある。ミニカーの場合は1/43が世界的な標準スケールになっており、これはもともとOゲージの鉄道模型と組み合わせて楽しむことを想定して作られ、定着したものだ。
その一方で、より精密な作り込みでクルマの魅力と迫力を再現できるということから、昨今では1/18スケールのミニカーも世界的に隆盛。そしてそれよりもさらに大きな迫力と再現度で、一般的な「量産ミニカー」としては頂点の存在とも言えるのが、1/12スケールだ。
さすがにユーザーとしても、このスケールともなると1/43ミニカーのように、多くの台数を気軽にコレクションするというわけにはいかない。それはもちろん、モデルを制作するメーカー側としても同様で、多くの場合はそのミニカー・ブランドの「フラッグシップ・モデル」というべき存在となるので、いきおい1/12スケールのビッグスケール・ミニカーは、メーカー開発陣の総力をつぎ込んだ、乾坤一擲(けんこんいってき)の逸品となるわけだ。
F40は「エンツォ最後のスペチアーレ」として伝説の存在
1963年に創業し、1991年からは当時まだ少数派だった1/18スケールでミニカー業界に参入したホビー界の雄、「京商」。同社の「KYOSHO DIECAST CAR」は瞬く間に世界的なメジャー・アイテムとなったが、同社製ミニカーの歴史の中でも大きなエポックと言えるのが、この1/12スケールの「フェラーリF40」だ。
ご存知の通り、実車のフェラーリF40はフェラーリの創立40周年となる1987年に発表された「スペチアーレ」だ。その発表会には老エンツォ・フェラーリ自身も出席している。4650万円というその新車販売価格は、当時の日本でも大きな話題となった。
ロードカーというよりもレーシング・マシーンに近い、乗り手を選ぶ過激かつピーキーな動力性能、世界各国のサーキットにおける活躍、そしてなによりエンツォ・フェラーリの息のかかった「最後のスペチアーレ」としても知られるF40は、いまや伝説的な存在となってオークションなどでも天文学的な価格で取引されている。