モータースポーツ130年の歴史が一堂に会する博物館
富士スピードウェイホテルとともにオープンした「富士モータースポーツミュージアム」はホテル棟の1階と2階を占める壮大なもの。創成期から約130年にわたるモータースポーツの歴史を、トヨタ車のみならず、世界各国のレーシングカーの展示で追想できるようなレイアウトがなされている。
伝説のグループ7マシン「トヨタ7ターボ」が真横に立てかけられたエントランスからミュージアムスペースに歩みを進めると、館内は1階/2階合わせて15のテーマに分かれており、巨大な支柱にテーマ番号とそれぞれのコーナーごとの解説が記されている。展示されるクルマは愛知県長久手市のトヨタ博物館から移送されたほか、国内の自動車メーカーや愛好家からレンタルされた車両(一部は公式レプリカ)もあるとのことである。
19世紀末の「パンァー(パナール)エ・ルヴァッソール」から始まる1階は、創成期のモータースポーツや、欧米でのモータースポーツの発展を示す「スタッツ・ベアキャット」や「ブガッティT35B」を展示。
そのかたわら、トヨタ自動車販売店の技術者たちの手で復元されたばかりの「トヨペット・レーサー」から始まる日本車コーナーは、往年の日本グランプリとして鈴鹿サーキットや富士スピードウェイを走った「日野コンテッサ900」や「トヨタ7」、「日産R382」が、豊富な写真とともに展示される。
エレベーターで2階に上がると、まず正面にはイタリアのタルガ・フローリオで入賞歴もあるという「ポルシェ904/8」がお出迎え。そのあとはミッレ・ミリアやWRC選手権などの国際ラリーで戦ったマシンたちが展示される。
また「ベントレー4 1/2リッター」で始まるル・マン24時間レースのコーナーでは、「マツダ787(レプリカながらサウンドエフェクトのサービス付き)」や「トヨタGT-One(TS020)」も展示。となりではトヨタ最後のF1マシン「TF109」や、国内のグラチャン選手権やグループAツーリングカーレース、GT選手権などで活躍したマシンたちにも再会できる。
そして2階の最後を飾るテーマ「15」では「カーボンニュートラル実現に向けた新たな挑戦」と銘打ち、水素燃料やバイオフューエルを活用したGAZOOレーシングの活動を紹介して締めくくられている。こちらにはまだ展示車両はなく写真だけの構成だったが、遠からず「カローラH2コンセプト」あたりの姿が見られるかもしれない。
オープン間際ということもあり、博物館としての「スピリット」のようなものはまだまだ薄い気もしたものの、規模・内容とも素晴らしいのは間違いのないところ。これからキュレーション担当者たちが企画展などを積極的に展開し、トヨタ博物館とは異なる個性を打ち出してくることを期待したい。
ちなみに富士モーターミュージアムは、スピードウェイホテル宿泊者でなくとも観覧可能で、入場料は大人1名1800円(休祝日は2000円)。オンライン予約すれば200円の割引となるとのことである。