筋金入りヒッピー世代の放浪作家・ジェイ
オーハイの郊外の公園で休んでいると、フォード「エコノライン」をベースにした1994年型「タイオガ(TIOGA)」に乗るジェイ・ノース(Jay North)という男と知り合いになった。オーハイの町でもヒッピー風な人たちを見かけたが、ジェイの風貌は際立っている。タイオガのボディに張りつけたトーテムポール風のモニュメントも異様だ。
ジェイは作家で、74冊の著作があるそうだ。「Jay Books」という自分の会社で本の販売をしている。日本には取次店という独特の流通経路があるが、アメリカをはじめ各国では、自らが版元となって本を販売していることが多い。
御歳74歳というから、まさにヒッピー世代。あのカウンターカルチャーをまともに受けた年齢だ。すでに妻も家族も他界していて、15年前に家を売却し、キャンピングカーで暮らす、いわゆるノマド生活となった。
仕事が全盛のときは、版元からの依頼で全米を旅行し、ほとんどの州、ほとんどの国立公園を回ったという。その記録はリヤにずらりと貼った国立公園のステッカーに見ることができる。彼にとっては勲章だろう。
老バンライファーと3日ほどともに過ごす
フライフィッシングが趣味など共通点も多く、自然と毎日、同じ場所で落ち合うようになった。知り合って3日目、ぼくが彼を手作りランチに招待し、彼はぼくに本を一冊くれた。「I am Bear Watcher Watching Bear Watching Me」という本だった。短い子ども向け(?)の本で、ぼくはヘッドライトの灯りを頼りに、ひと晩でそれを読み切ってしまった。
「もう本も売れない。でも、何かはしなくちゃいけない」。ぼくは1泊40ドルのフルフックアップのキャンプサイトに泊まっているが、ジェイはどこかのランチ(牧場)にキャンパーを停めさせてもらっているようだ。もしかしたら、勝手に停めているだけかもしれない。
「また、君のように旅がしたいよ。このあとはどこに行くんだい? え、決めてない? それならケーンビルがいい。あそこはきれいな町だ」。ふたりで老眼鏡を行ったり来たりさせながら、ナショナル・ジオグラフィック製ロードマップをチェックすると、セコイア国立公園の南に米粒のような小さな字で「Kernville」という町が見つかった。
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