SUVのネガを隠すEV
EQB350 4MATICに試乗した。ステアリングの左奥に配置されているスタートボタンを押すと、目の前にあるスクリーンが一斉に起動する。コラム右側のレバーでDレンジをセレクトして、ブレーキペダルから足を離すとクリープする。このあたりの一連の操作は内燃エンジン仕様のGLBとまったく同じもの。違うのはエンジンの音がしないことだ。
動き出しはきわめてスムースで、トルク感たっぷりにシームレスに速度が高まっていく。ペダルを強く踏みこめば、とても3列シートSUVとは思えない加速をみせる。そしてコーナーへの進入時も重量物であるバッテリーがフロア下に集約されているため、ロール感も少なく、背の高いSUVのはずなのにそれをまったく感じさせない。
走行モードは通常はコンフォートで、よりキビキビ走りたいときはスポーツを選べばいい。ステアリングの手応えが増し、アクセル操作に対してレスポンスが鋭くなる。試乗車は標準仕様で18インチタイヤを装着しており、エアボリュームもたっぷりあって乗り心地も良好だった。よりスポーティなものが好みなら、オプションのAMGラインパッケージを選ぶのがいい。こちらは、20インチホイールに、ダイレクトステアリング、減衰力可変式のスポーツサスペンションなどを装備している。
4MATICとはいうものの、通常走行時は電力消費量を抑えるためリヤのモーターをメインに2輪駆動する。そして、走行状況に応じて毎秒100回の頻度で前後アクスル間のパワーバランスを調整するという。正直にいえば、いま2駆で走行しているのか4駆なのかは、モニターをみていなければ判断がつかない。それほど緻密で自然に制御されている。
回生ブレーキの強度はステアリングに備わるパドルを使って、コースティングから軽度、中度、強度と4段階で設定が可能。右がシフトアップ、左がシフトダウンの要領で、右側を操作すれば回生レベルが低減、左側で回生レベルが上昇する。普段は「D Auto」に設定しておけばいいだろう。これはレーダーによって先行車両との車間距離などを検知し、それに応じて回生レベルを自動調整してくれる優れもの。街乗りでも高速道路でも使い勝手のいいものだ。ちなみに回生ブレーキによって完全停止はしない。あくまで最後はドライバーの意思でブレーキ操作を行う。このあたりもメルセデスの安全哲学のあらわれだ。
車両価格は、残念ながらいまの為替の影響もあって導入時より少し高くなった。EQB 250が822万円、EQB 350 4MATICが906万円。少々高いかなとも思うが、国からのCEV補助金や自治体による補助金、環境性能割非課税、重量税免税、自動車税免税といった優遇税制を活用すればかなり手頃になる。航続距離や車両コストなど、これまで様々な課題が指摘されてきた電気自動車だけれど、いま現実的な選択肢となってきたことは間違いなさそうだ。