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トヨタ「レビン/トレノ」は「86」だけじゃない! FF王者「シビック」に真っ向勝負を挑んだトヨタ「AE111」をいまこそ再評価しよう

前期型と後期型のAE111

前期型(写真右)と後期型のランデブー走行

トヨタを代表するコンパクトスポーツモデル

 カローラレビン&スプリンタートレノ。言わずと知れたトヨタが世界に誇る名車カローラ(スプリンター)をベースに、性能もスタイリングもスポーティに仕立て上げた日本を代表するコンパクトカーだ。

 歴代モデルでもっとも有名なのは4代目となるAE86。次のAE92からは駆動方式がFFに変更されたことや、FFには不動の王者たるホンダ・シビックが君臨していたため、今ひとつ地味な印象を持つ人が多いかもしれない。しかし、後輪駆動を捨てたからといって速さがスポイルされる理由もなく、AE92もその次のAE101もFFスポーツとしての評価は非常に高かった。

運動性能を磨き上げてAE111は登場

 そして1995年にデビューしたのがAE111だ。エンジンの型式こそAE101と同じ20バルブの4A-GEだが、エアフロからDジェトロに戻ったほか、4連スロットルの径を拡大など数々のブラッシュアップで馬力は160psから165psに向上。実測のパワーやフィーリングではさらに差があるといわれ、AE111の黒ヘッドは最後にして最高の4A-GEといっていい。

 前述のとおりライバルはEG6やEK4のシビックで、ストレートの速さこそVTEC勢に及ばないものの、レビン&トレノvsシビックという構図は不変だった。1990年代の後半から2000年代にかけての定番チューニングを振り返ってみたい。

エンジンの精度を高めたN1仕様が人気に

 エンジン系はハイカムやハイコンプピストンといったパーツも存在したが、王道はワンメイクレース「C/SNC(カローラ・スプリンター・ノーマル・カップ)」のN1仕様。純正パーツのバランス取りや重量合わせで大幅なパワーアップこそ難しいが、レスポンスのよさと扱いやすい特性はステージを選ばないオールマイティさだ。

 複雑なメカニズムかつ極端な高回転を多用するVTECより耐久性も高いといわれ、N1エンジンに吸排気系とECU現車セッティングを完成系と考える人が多かった。

 また純正で4連スロットルを備えていることから、ファンネルを剥き出しにして吸気サウンドを楽しんだり、エンジンルームのドレスアップに役立てるユーザーもいた。AE111の4A-GEはAE86へ換装するエンジンとしても人気が高く、FFになって以降のレビン&トレノのファンとしては複雑でもあるが、優れたパフォーマンスである何よりの証といっていいだろう。

足まわりはシンプルなストラットのほうが好まれた

 トランスミッションは後期型になると上位グレードに6速MTが採用。ただしギヤ比がイマイチ合わないサーキットも多く、ワンメイクレースでは5速MTを使うのが主流だった。

 足まわりはオーソドックスかつシンプルなストラット方式と、AE101から引き継ぐトヨタ独自のスーパーストラット。パーツ点数が多いためバネ下の重量が増える、サスペンションのストローク量が確保しにくい、アライメント変化にクセがあるといった理由から、サーキット中心のユーザーには通常のストラットが人気だった。とくに大きくローダウンできるTRDのN1レース用の車高調は、セッティングのデータが豊富に揃っていることもあり、中古でもそこそこの高値で売買されていた記憶がある。

維持するのが難しくなってきたがまだまだ楽しく遊べる!

 外装で人気があったのは定番の純正フルエアロ、そして黄色いデモカーが印象的だったトムスだ。2000年代の中旬になるとボメックスからも新製品が発売され、装着している車両はサーキットやオフ会で今もよく見る。

 当時のチューニング誌では主役になる機会こそ少ないものの、シビックのライバルとして誰もが真っ先に名前を上げる存在。同じテンロクであるミラージュはN1レースの盛況ぶりに反比例し、ストリートや草レースでは見かける機会が非常に少ないこともあり、王者シビックに挑む旗頭は間違いなくAE111レビン&トレノだった。

 現在は純正パーツが絶版になったり前述のエンジンが載せ替えに使われたりと、コンディションのいい中古車を探すのも維持するのも難しくなりつつある状況だ。とはいえAE111を愛するチューナーも少なからずおり、そういった存在に巡り会えれば、まだまだ現役で走り続けることは可能だろう。

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