ライトウェイトスポーツの代表格として世界中で支持された
2021年に生産を終了した、イギリスのライトウェイトスポーツ「ロータス・エリーゼ」。約25年、3代にわたって作られてきたこのモデルは、世界中のスポーツカー好きに愛され、惜しまれつつ生産終了となりました。ロータスというスポーツカーメーカーを救ったモデルである、エリーゼの歩みを振り返ってみましょう。
悪化していたロータスの経営
エリーゼが登場した1990年代中ごろ、ロータスの経営状態は決して良いとは言えない状態でした。1982年に創業者であるコーリン・チャップマンが亡くなってから、経営状態は徐々に悪化。以後1986年にアメリカのGM、1993年にイタリアのブガッティ、1996年にマレーシアのプロトンと、さまざまな自動車メーカーのもとを転々としました。
長年参戦を続けていたF1も1994年シーズンをもって休止してしまい、経営状態が芳しくないのは誰の目にも明らかな状況でした。そんななか、1995年のフランクフルトモーターショーで、ロータスはエリーゼを発表します。メカニズム的な部分でセンセーショナルであったのは、アルミ製のバスタブシャシー。各部の接合にリベットや溶接を使用せず、航空機などに用いられる接着剤で接合しており、この手法は自動車としては世界で初めての試みでした。
この手法を用いることにより、軽量・高剛性なシャシーを実現。初期モデルの車重は約700kgと軽量で、高いコーナリング性能を披露。ローバー製の1.8L・122psという非力なエンジンを搭載しながら、優れた加速性能も実現していました。
モータースポーツバージョンも登場した「フェイズ1」
当初年間800台の生産台数を予定していたエリーゼですが、人気の高さから注文が殺到したことで生産台数が見直され、年間の生産予定が2500台に引き上げられました。1999年には可変バルブタイミング機構「VVC」を装備し145psへとパワーアップした「111S」を追加。
2000年にはエリーゼをより硬派にしたワンメイクレース仕様「モータースポーツ・エリーゼ」が登場し、もっと速く、もっとパワーをという需要に応えるように、そのバリエーションを増やしていきます。なお、このモータースポーツ・エリーゼは、のちに「エキシージ」として市販化されています。
トヨタエンジンを採用し進化した「フェイズ2」
2000年になると2001年モデルとして大幅に改良が施された、新世代のエリーゼが発表されました。フェイズ2と呼ばれるモデルで、エクステリアデザインに大きな変更が与えられたほか、足まわりの大幅な変更や強化が行われました。
また、フェイズ2への進化で特徴的だったのが、日常での快適性能が向上したことです。まるでレーシングマシンのような太くて高いサイドシルが低くなり、フェイズ1に比べて乗降性が向上(といっても乗り込みにくいのではありますが)したほか、エアコンも設定されました。
当初はフェイズ1と同じローバー製エンジンだったものの、モデルライフ途中からはトヨタ製のエンジンを搭載。2004年からはハイパワーグレードに192psを誇る2ZZ-GEエンジンが、2006年からはベーシックグレードにも1ZZ-FEエンジンが搭載されました(どちらも排気量は1.8L)。
また、この世代では2ZZエンジンにスーパーチャージャーを搭載した「エリーゼSC」なども追加。フェイズ2はエリーゼらしい軽量な仕上がりながら、より速く、より快適に進化したモデルとなりました。