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世界に9台! 謎のスーパーカー「ザガートGTニッピオ」のベースはなに? フェラーリ「599」の面影を探せ!

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Courtesy of RM Sotheby's

ベースモデルはフェラーリ599

 じつを言うと、前ページはRMサザビーズ欧州本社から発信されたプレスリリース兼用の公式オークションカタログを、ほぼそのまま翻訳して転載させていただいたものである。

 勘の鋭い方ならお気づきかもしれない。今回「St. Moritz」オークションに際して制作されたドキュメント類では、ベース車両がどのモデルであるかについて、あえて触れていない。しかしこの種のスペシャルカーに造詣の深い方ならば、きっと正体をご存知であろう。ここでは匿名とされたベース車両は、フェラーリ「599GTBフィオラーノ」である。

 2006年、フェラーリが「575Mマラネッロ」に代わるV12ベルリネッタとして599GTBフィオラーノをリリースすると、気を見るに敏なザガートは、599をベースとした少量生産モデルの企画を打ち出した。そして、2007年には第一号車が完成したといわれているのだが、そのお披露目の際にザガートが命名していた車名は「フェラーリ599 GTZニッビオ」だったと記憶している。

 また、昨2021年2月にRMサザビーズ欧州本社が開催した「PARIS」オークションでは、同じニッビオのスパイダー版が「2009 Ferrari 599 GTZ Nibbio Spyder by Zagato」の車名で出品されていた。おそらくは、つい最近になってフェラーリとRMサザビーズ社の間でなんらか取り決めがなされたのだろうか、少なくとも今回の出品については「フェラーリ」ないしは「599」の名が車名から外されているようなのだ。

 ともあれ、現在も継続されるザガートの慣例により、2007年から「ニッビオ」は9台が製作されたほか、オープン版の「ニッビオ・スパイダー」も最大9台(ただし実際は6台で完結か?)が製作されることになっていたが、今回のオークション出品車両は前者のベルリネッタである。

 その印象的なデザインはスタンダードの599GTB、あるいは575Mマラネッロをベースにザガートが架装した575GTZとはまったく異なるもの。ダイナミックな意匠のノーズは、彫刻のようなサイドのキャラクターラインや、小股の切れ上がったシャープなテールと巧みなマリアージュを披露する一方、ザガート伝統の職人技も見事に体現している。

 そしてスパイダーにはない、ベルリネッタ版ニッビオのみの特典が、ザガートのアイコンである「ダブルバブル」ルーフである。

MTだったらさらに高値が期待できた

 オークションカタログに謳われているように、2016年にザガート化が施工されたのちにはほとんど走行距離を重ねることもなく、事実上の新車状態でコレクションされていたこのニッビオ・ザガート。競売でも順調にビッド(入札)が進んだようで、81万5000スイスフラン、日本円に換算すれば約1億2090万円という価格で落札された。

 ニッビオ・ベルリネッタについては、2018年にドバイのディーラーが149万5000ドルで販売した実績もあるようだが、こちらは9台が製作されたなかでたった1台の6速マニュアル車。その点を考慮すれば、今回の落札価格も充分に高価なものと思われる。

 いずれにしても、今回の「St. Moritz」オークションに出品された3台の現代ザガート車のなかでも飛びぬけて高いこの落札価格は、たとえ公式に名乗ることでできなくとも、フェラーリであるという事実がマーケットで大きな影響を及ぼすことの証明なのであろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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