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たった2台のみ販売! スカイラインR32「GT-R」ベースの「ZERO−R」とは? HKS渾身のコンプリートカーでした

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: AMW編集部

2000kmの実走テストも行われたZERO-R

 1989年に日産スカイラインGT-R(R32)がデビューしたとき、街の走り屋からレース関係者まで、誰もがそのパフォーマンスに惚れ込んだ。とくにチューニング業界では、有名どころから新進気鋭のチューナーまで夢中になってGT-Rに取り組み、大手チューニングパーツメーカーもGT-R用のパーツ開発に心血を注いだ。そうしたなか、とくに際立っていたのがHKSだった。

究極のGT-Rを作り上げたHKS

 R32GT-Rが登場した直後から、HKSではR32ベースのコンプリートカーの開発に乗り出し、そこから2年の歳月をかけて、1991年に「ZERO-R」を完成させた。

 限定10台と少量生産ではあったが、保安基準をクリアした上で、「270km/hでの高速巡航、そして300km/h以上の最高速」というパフォーマンスと『欧州スーパースポーツを超える性能』を体現した究極のGT-Rを作り上げた。この「ZERO-R」、今日の目から見ても非常に先進的な一台で、とくに注目できるのは次の2点だ。

 ひとつ目は燃料タンクを後部座席位置に移設し、2シーター化したこと。燃料タンクをリヤシートの下に設置して前後の重量バランスを改善させるアイディアは、R33GT-Rでも採用された方法。HKSの「ZERO-R」では、R33GT-Rに先駆け、その実用化に成功していた。

 ふたつ目は、ボディ下面をフラットボトム化し、燃料タンクの移設でできたスペースを大きなディフューザーにして、グランドエフェクトカーに仕上げたこと。

 量産車では、R34GT-Rがアドバンスド・エアロシステムを採用し、量産車世界初のグランドエフェクトカーの称号を得たが、「ZERO-R」は1991年の時点で本格的な空力マシンとして、世に送り出されていたわけだ。

時代を超えた世界に通用するハイパフォーマンスだった

 エンジン本体は、2mmボアアップして88φの鍛造ピストンを組み込み2688㏄まで排気量をアップ。タービンは当時の最大級TA45Sタービンでシングル化し、カムプロフィールも変更している。H断面鍛造コンロッドなどで内部も強化され、大容量オイルクーラーも装着。450㎰/50.0㎏-m以上の堂々たるスペックを誇った。

 トランスミッションはホリンジャーの6速MTに変更され、クラッチはHKS製ツインプレートを装着。サスペンションも減衰力調整式のHKSオリジナル、ブレーキはAP製のキャリパー+355φの大径ローターとストッピングパワーも充実していた。ホイールはテクノマグネシオ製の18インチで、なんとマグネシウム合金の1ピースだった。

 開発時にはドイツのニュルブルクリンクを走り込み、ドイツのアウトバーンからイタリアのアウトストラーダ、フランスのオートルートを経て、最終目的地のスペイン・バルセロナまで2000kmの実走テストも敢行。まさにヨーロッパのスーパースポーツを超え、R33、R34のお株を奪う、時代を超えた世界に通用するハイパフォーマンスを手にした一台だった。ちなみに販売価格は1600万円となっていた。

 10台限定だったが、バブル崩壊のあおりも受け、2台しか売れなかったとのこと……。のちにHKSテクニカルファクトリーが、2005年に1台、2007年に2台、2015年に1台復刻・アップデート版を製作したといわれているが、歴史に残るコンセプトカーと言っていいだろう。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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