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昭和の「水中花」シフトノブのルーツは? 「ドクロ」や「サイコロ」まで百花繚乱だったブームを検証します

マイク型シフトノブ

一番よく触る部分だから満足度もアピール度も倍増!

 かつてマニュアルシフトが全盛だった時代、多くの人がシフトノブを社外品に交換してドレスアップを楽しんでいた。ポピュラーな水中花からサイコロ、髑髏なんて変わり種まで多彩にもほどがある進化を遂げた、シフトノブ・カスタムの歴史を振り返ってみよう。

昭和のマニュアル車で大流行し今でも人気あり

 マニュアル時代の国産旧車乗りの間で今でも人気のあるパーツのひとつに、「水中花」のシフトノブが挙げられる。昭和レトロの代名詞として取り上げられ、今やアメリカでも日本から輸出された旧車とともに人気のアイテムとなっているそうだ。

 そもそもなぜ、社外のシフトノブへの交換がポピュラーだったのだろうか? それは多くのマニュアルシフトのノブは、単純にネジで固定されており、脱着や交換が非常に簡単であることが大きな理由だった。シフトノブを固定しているシャフトのネジ山も数種類しか使用されていなかったため、汎用性が高かったのも理由のひとつだろう。

シフトノブのカスタムはじつはアメリカ発祥

 そんなカスタムシフトノブのルーツは意外にもアメリカにあった。アメリカでは早くからオートマチックが普及していたが、その多くはステアリングコラムにレバーが備わるコラムシフトだった。このコラムシフトのノブは、ダッシュ中央のちょうどステアリングの横に見えるため、ドレスアップするのに最適なアイテムだったのだ。

 古い写真を見てみると、1960年台にはすでに純正ではないシフトノブを装着している姿をみることができる。その後、ビールサーバーのレバーやガラス製のドアノブなどを流用したり、ラッキーダイス(サイコロ)やスカル(骸骨)、ビリヤードの8ボールなどのカスタムシフトノブが登場。さまざまなバリエーションが誕生していく。

水中花のルーツはレジン製のクリスタルノブ

 さて、時代とともに徐々にカスタムシフトノブも多様化していく。レジンやアクリルなどの素材が一般化すると、透明のシフトノブなども登場。とくにローライダーの世界でガラス製のドアノブなどにルーツを持つクリアパーツが流行したこともあって、人気のアイテムとなっていくのだ。

 当初は透明や薄く着色したノブの中に細かなメタルフレークや気泡を封入したものなどからスタートしたが、そのうち本物の蝶を入れたものや、ターコイズなどの石を埋め込んだものなどが登場するようになる。日本で1970年代の半ばに誕生したと言われている水中花のシフトノブは、おそらくそんなクリスタルシフトノブが参考になったと考えられるのだ。

水中花も数あるカスタムノブのひとつだった

 前述のとおり、日本で水中花のシフトノブは1970年代中盤に誕生するが、当時は「水中花」という名称は誕生しておらず、たんに「アクリルシフトノブ」と呼ばれていたようだ。じつはアクリルシフトノブは造花だけでなく、鮮やかな色で着色したものや、内部にコンパスを入れたものまでさまざまな種類がリリースされていた。

 なかでも人気だったのが造花を埋め込んだものだったというわけだ。ちなみに水中花シフトノブという呼び方は後に誰かが始めたようで、その原点は不明ながら、現在ではポピュラーな呼び方になっている。

AT時代の到来で徐々に廃れていったカスタムシフトノブ

 カスタムシフトノブはオートマチックトランスミッションの普及と反比例するように徐々に衰退していく。もちろん多くのアクセサリーメーカーはオートマチック用のカスタムシフトノブもリリースしていたのだが、ATシフトノブの多くはO/Dキャンセルのスイッチや、シフトミスを防ぐプッシュボタンなどが備わるため、容易に社外品に交換することができなくなってしまったのだ。また、多くのATノブはネジで固定する方式から、より複雑な固定方法になっていく。

 こうしてカスタムシフトノブは時代とともに姿を消し、気がつけばシフトノブを交換するというドレスアップ手法すら知らない世代が大多数を占めるようになってしまったわけなのだ。

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