車高を下げたら必ず対策したい補正キットの必要性とは
トヨタ「ハイエース」のバンは、荷物を積み込んで運ぶことが目的のクルマで貨物車両に分類される。そのため荷室には最大で1トンを超える荷物の積載を行うことだってある。空荷と最大積載の状態ではクルマの車高も大きく変化し(積載量が重いとサスペンションが沈み込む)、この重くなった車体ではブレーキングをはじめとした操作フィーリングはまったく違うものになってしまう。そんな変化を最小限に抑える目的で装備されているのが、プロポーショニングバルブ(ロードセンシングプロポーショニングバルブ)と呼ばれる装置だ。
車高の変化を検知して前後ブレーキの利きを調整
この装置は200系ハイエースの場合、リヤデフケース近辺に取り付けられており「荷物を載せる=車高が下がる」「空荷=車高が上がる」ことを検知して、前後のブレーキバランスを調整する重要な役割を持つ。具体的には、重い荷物を積み込んでもしっかりブレーキが利くように設計されているハイエースなので、ブレーキ性能は最大積載量を基準に考えられている。しかし、つねにフルパワーでブレーキを利かせると、空荷のときにはブレーキが利き過ぎる傾向にあるのだ。
そこで必要になるのがプロポーショニングバルブだ。車体の沈み込みに合わせて積載量を予測した上で、それに見合ったブレーキバランスをコントロールする役割を持ち、空荷のときには弱く、最大積載時には強く利く制動(ブレーキ)がこの装置によって可能になる。このようにプロポーショニングバルブは積載量に対して、つねに最適なブレーキの利きを発揮できるように考えられた貨物車特有のシステムなのだ。
ロワードしたハイエースのブレーキ補正パーツの働きとは?
しかし、この装置は比較的原始的な構造で作動している。デフとボディを結ぶロッドを配置してそこにバルブを設置。荷物を積み込んで車高が下がる(デフとホーシングが車体側に近づく)と、このロッドが押されてバルブを作動させることで、リヤブレーキの調整しているのが基本的な仕組みだ。
もちろん純正状態(ノーマル車高)では正しく作動するので問題ないのだが、困るのはカスタマイズをして車高を落としたとき(ロワード時)。ロワリングブロックを使ってリヤを下げると、デフ&ホーシングは車体側に近づくことになる。つまりプロポーショニングバルブから見ると、荷物が積載されて車高が下がったのだと認識してしまうのだ。
こうなるとセンサーが正しく働かずブレーキバランスに異常が起きてしまう。この状態では、空荷であってもブレーキが利き過ぎてリヤブレーキの働きが過敏になってしまう。とくに空荷の状態でブレーキを強く踏んでしまうと過剰に利くリヤブレーキがロックしてしまい、ABSが早期に作動するなんてことも起きかねない。これによって制動距離が逆に伸びてしまう危険もはらむのだ。
ではこの状態を改善させることはできないのだろうか? このシステムはバルブを作動させているロッドにネジが切ってあって作動領域を調整することができる(積載量に対してブレーキの効き具合を微調整できる)ので、ある程度の車高の上下には対応できる。しかし大きくロワードすると、この調整可能範囲を超えてしまって、適正値に設定することができなくなってしまうのだ。つまりロワードすると空荷でもリヤブレーキが利き過ぎた状態が続いてしまうことになる。
ハードに落としたクルマでも補正ブラケットの装着で対策することが可能だ!
しかし心配は無用だ。ヘビーなロワードユーザーに向けた対策部品が社外品としてパーツメーカー各社からちゃんと用意されている。プロポーショニングバルブ補正キット/補正ブラケット/補正ロッドなどと呼ばれる補正パーツがそれで、その名の通りプロポーショニングバルブの作動領域を補正して、ロワードした分のプロポーショニングバルブの作動領域を調整、リヤブレーキの利きを適性値に戻すことができるのだ。ごく簡単なステー形状のパーツなのでかなりお手軽価格(800円〜3000円程度)で買えるのも魅力だろう。
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ハイエースを購入してロワードしてホイールも替えて、カッコ良くドレスアップしたいと思っているユーザーは、安全性と乗りやすさを考慮して、この補正パーツを取り付ける必要性を憶えておくといいだろう。また現時点でロワードしていてブレ-キの利きに違和感を憶えているユーザーは、いますぐ補正パーツの導入を実施したい。