運転が面白いミニカーのような感覚だった!
サスペンションやブレーキシステムを自社で製造している「エンドレス」。同社の創業者で、現会長の花里 功氏が2021年春に長野県の佐久穂町に開設したのが「130 COLLECTION」だ。国内外のクラシックカーとエンドレス関連のレーシングカーを集めて展示したカーミュージアムである。
展示されている30台以上の車両は新車のようにレストアし動態保存。その多くは車検を取っているため、公道を走ることも可能だ。
エンドレスの「130 COLLECTION」は、珠玉の名車を見るだけでなく運転席に乗り込むこともできる。これがほかのミュージアムと違うところだ。また、事前に予約すれば同乗走行を楽しむこともできるのが嬉しい。
というわけで、花里会長のご好意で、今回はホンダの名車を同乗ではなく、実際に運転させてもらうことができた。最初にステアリングを握ったのは、エンドレスがレストア事業を開始した記念すべき最初の作品、ホンダN360だ。
エンドレスのレストア事業で最初に製作した1台
2012年秋、ホンダはN360をオマージュしたN-ONEを発売している。これを見た花里会長が、カスタムカーの祭典として知られ、マニアも多い東京オートサロンに両方を並べて展示したら面白いのではと提案し、レストアを開始したのだ。
「仲のいい中古車店の店長が最終型のN III360を持っていたのです。スペアタイヤも付いているなど、よさそうに見えたので、これを譲り受けました。バラしたらボディなどは腐っていましたが、きれいに板金して仕上げ、NII360のツーリング仕様にしています。ツインキャブは、オークションで手に入れて装着しました。タイヤは14インチにし、エンケイのアルミホイールを組み合わせています。サイズアップに合わせて、ブレーキキャリパーを製作し、フロントはCMCディスクブレーキにグレードアップしました。また、オーバーフェンダーも装着しています。マフラーはセンター出しのデュアルを手曲げで製作し、これに二輪用の触媒を突っ込みました」と、花里功会長は製作当時を振り返る。
ホンダNIII昭和の名車ホンダ「N360」に試乗! エンドレスが仕上げたエンジンサウンドが気持ちいい!360改、ホンダN360は、暖気が済んでいたこともあり、キーのひと捻りで始動した。フロントに積まれた354ccのN360E型直列2気筒SOHCエンジンにキャブレターを2連装し、最高出力グロス36ps/9000rpm、最大トルク3.2kg-m/7000rpmを発生する。
排ガス対策する前の作品だからエンジンは軽やかに吹き上がり、レスポンスもシャープだ。さすがに高回転まで回せなかったが、レッドゾーンは9000回転からになる。当時を思い起こすと、気持ちよさが際立つのは6000回転から上で、センターマフラーはビートの効いたエンジン音を奏でた。
600kgに満たない軽量ボディだから冴えた加速を見せつける。ダッシュボードから突き出した独特の形状のシフトレバー(4速MT)は扱いやすい。4速MTだが、エンジンは思いのほかフレキシブルだ。変速するのが楽しいエンジンで、回すと気持ちいい。
オリジナルと大きく違う制動フィールが好印象
サスペンションはフロントがストラットとコイルスプリング、リヤはリーフスプリングによるリジッドアクスルである。本革巻きステアリングとブリッド製のバケットシートに変えられているから気持ちよくステアリングを握ることができた。サスペンションは強化され、タイヤも14インチに格上げしているからコントロール性は大きく向上している。
当時のFF車はマニアックな乗り味だった。キックバックは強いし、アンダーステアも頑固だ。だからクルマをねじ伏せるドライビングを強いられた。だが、このN360は意のままに操ることができる。
アンダーステアも顔を出すが、早めの操舵と切り増すことによって狙ったラインに乗せやすい。オリジナルと大きく違うのは制動フィールだ。心もとなかったが、エンドレスのブレーキシステムを装着したN360は、真っ直ぐ、最短距離で止まる。安心感は絶大だった。乗り換えるのをためらうほど、運転が面白いミニカーだ。
エンドレスでは、このN360の第2作を考えている。外観と内装はノーマルにする予定で、タイヤは標準の10インチにしたいそうだ。ミニが8スポークホイールを履いているので、N360にも似たイメージのホイールを履こうと考えている。
アルミホイールを装着するにしても、ブレーキキャリパーは車検に受かるような設定にしたいそうだ。また、ボディカラーは純正のクリーム色にする予定で、三角窓に被せるゴム類も見つかった。今から完成が楽しみで仕方がない。
【詳しくはこちら】
■130 COLLECTION
長野県南佐久郡佐久穂町高野町1828-1
TEL:0267-88-7444
営業時間:11:00~17:00
定休日:月曜日
入場料:1人1000円(中学生まで無料)
https://www.endless-sport.co.jp