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日産「GT-R」がデビュー当時からランフラットを採用した理由とは? なぜサーキット走行には向いていないかを解説します

サーキットを攻めるR35

ランフラットながらサーキット走行でも自在に操れるのが専用設計の証だろう

パンクしても一定距離は走れるのがランフラットタイヤ

 絶対的なグリップ性能がサーキット走行には足りないというのが、ランフラットタイヤがサーキットに向かないもっとも大きな理由だと思います。言い方を変えれば、ランフラットタイヤでサーキット走行を前提としたレーシングタイヤやセミレーシングタイヤを作れば、ランフラットでのサーキット走行は何の問題もありません。

日産GT-Rはニュルを走り切るためにもランフラットを採用

 その好例として挙げられるのが「GT-R」に装着されるランフラットタイヤです。だいぶ昔の話になりますが、日産GT-R(R35)デビュー時の説明で、開発主査であった水野和敏さんは「GT-Rをニュルブルクリンクで走らせると最大5Gの縦Gがかかる。これを受け止めるにはランフラットタイヤが必要なのだ」と言っていました。それと同時にGT-Rのサスペンションセッティングは、サスペンションをあまり大きく動かさず、接地面をつねになるべく広くとるように作られています。

 いま一般的なランフラットタイヤはサイド補強式と呼ばれるもので、タイヤの側面=サイドウォール内部に補強ゴムを配置し、タイヤがパンクして空気圧がゼロプレッシャーになってもタイヤがつぶれないように作られています。もちろんGT-Rのランフラットタイヤもサイド補強型です。

 つまり、タイヤのサイドウォール部の変形量が少ないのです。ランフラットタイヤの特性を生かすためには、サスペンションのセッティングもロールによる対地キャンバーの変化を少なくして、広く接地面を取るようなセッティングが向いています。

 つまりロール量が少ないサスペンションが向いているのです。そしてこのセッティングとタイヤの特性を逆手に取ったのがGT-Rなのです。5Gにも達する縦Gを、タイヤをブレークさせずに受け止めるために使い、また接地面積変化を少なくすることで、安定したグリップ性能を引き出すことができるわけです。

ランフラットを活かすセッティングではピーキーな動きになりやすい

 ただし、このセッティングはロールが少なくタイヤの変形も少ないことから、グリップとスライドの落差が激しくなりやすいのです。言い換えるとピーキーなグリップ特性になりやすい。そのへんを一切合切わかってサスチューンを施したGT-Rだからこそ、サーキット走行も可能なのです。

 ほかのランフラットタイヤを採用しているクルマでも、ランフラットタイヤの「パンクしても走り続けることができる」という本来のメリットのほかに、(タイヤの変形が少ないので)接地面を安定させ安定性を高めるサスチューンは行われているはず。ですが、想定している走行シーンが一般道や高速道路、あるいはワインディングロードなので、グリップ性能やコンパウンドの特性がサーキット走行には向かないのです。

 ただ、そのぶん気温の変化やドライ路面からウエット路面まで広いレンジで安定したグリップ性能を発揮してくれます。また乗り心地の硬かった登場当初のランフラットタイヤから比べると、近年のランフラットタイヤはグッと乗り心地が良くなっています。ランフラットタイヤは、メーカーの純正装着用タイヤとして作られているので、一般道で性能を発揮できるように作られているのです。

サーキット走行に特化した市販用ランフラットはまだない

 まだリプレース用ランフラットタイヤは多く作られていませんから、サーキットではあまり相性がいいとは言えないのです。純正装着されているタイヤでサーキットを走っても、走れないことはありませんが、サーキットではやはりサーキット用に作られたセミレーシングタイヤや、ブリヂストン・ポテンザ、ヨコハマ・アドバン、ダンロップ・ディレッツァなどのハイグリップ系スポーツタイヤに履き替えたほうがサーキット走行をより楽しめるのです。

 例に挙げたGT-Rでさえ、サーキットを走るためだけに作られたわけではありませんから、専用の超ハイグリップタイヤがあれば、よりパフォーマンスを引き出すことができる(可能性がある)わけです。

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