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アウトドアブームで注目集まる「ルーフキャリア」の知られざる歴史とは? サーフィンやスキーのマストアイテムでした

クラシックなルーフキャリアを装備した日産パオ

アウトドアの良き相棒「ルーフキャリア」/「ルーフラック」

 昨今のアウトドアブームでこれまでより一層身近になった「ルーフラック」や「ルーフキャリア」。ルーフトップテントを装着したり、大きなルーフボックスを搭載したりすることで、愛車の積載能力や居住性を大きく拡張することができる人気のアイテムだが、その歴史はあまり知られていない。そこで今回はその歴史を紐解いてみよう。

50~60年代ヨーロッパでは車種別に設計された専用品が一般的だった

 ヨーロッパでは1950年代には、「ビートル」や「ミニ」といったポピュラーな車種に、吸盤状の脚をルーフに載せてレインガーターに引っかけて固定する、車種専用設計のルーフラックの基礎のような形がアクセサリーとして登場している。モンテカルロラリーでミニクーパーがタイヤを積んでいたキャリアを想像してもらえれば、わかりやすいだろう。

 その後、より耐荷重を高めるために、脚をレインガーターに載せるスタイルに進化していく。この車種専用設計のキャリアは長期間大きなモデルチェンジをしなかったミニやビートルの世界ではポピュラーで、今でもリプロダクション製品が入手できる。

モデルサイクルの短いアメリカでは汎用性をアップした製品が登場

 ところがこの専用設計のキャリアは、アメリカ車のように毎年モデルチェンジを繰り返す車種だと成り立ちにくい。アメリカではCarter社から吸盤脚かつレインガーターフックの長さを調整式にすることで、異なる車種にも装着可能な「CARPAC」キャリアがリリースされるなど、汎用性の高い製品が人気となった。

 しばらくはこの方式がポピュラーだったが、アメリカでは1960年代に入るとレインガーターがない車両や、後部がハイルーフになるステーションワゴンなどが出現するようになる。これに対応すべく、ルーフレールを最初から装着した車両や、ルーフに直に荷物が搭載できるように、直接ルーフに穴を開けて装着するキャリアがオプションとして用意されるようになる。この仕組みはステーションワゴンなどの一部車種では1980年代ごろまで存在するほど、アメリカでは長きにわたってポピュラーだった。

アメリカで長いサーフボードの専用ラックが誕生

 これとは別にアメリカではサーフカルチャーが花開く1960年代になると、ルーフにサーフボードを固定するための専用キャリアが登場する。それまではルーフに直接固定していたが、左右のレインガーターを使ってパイプ状のキャリアを固定し、これに専用のゴムでボードを固定する仕組みとなったのだ。これはレインガーターのある古い車種なら左右幅を調整できるために汎用性が高く、また当初のサーフボードが今よりも長いいわゆる「ロングボード」で、車内に格納するのが不可能だったために急速にポピュラーとなった。

 古いクルマには現行のシステムキャリアよりも似合うため、現在でも「アロハサーフラック」などの名称でリプロダクションが入手できるほど、サーファーの間では今でもポピュラーな製品となっている。

一方ヨーロッパではスキーキャリアが進化

 ふたたび場所をヨーロッパに移すと、1962年にスウェーデンのTHULEがスキーキャリアを発売する。バーの幅や高さが調整できるようになっている汎用設計で、それまでにも各車種専用のアクセサリーとしてはスキーキャリアが存在していたものの、汎用性の高いTHULEの商品は各車種向けの商品が主流だった世界に一石を投じるアイテムとなったのだ。

 続けて1968年にこのキャリアに装着するルーフバスケットをリリースすると、このスキーキャリアはシステムアップすることでルーフキャリアも兼ねることができると大ヒットとなる。この汎用性こそが、THULEがメジャーなキャリアブランドとして現在でも最先端を走り続けている原点となったのだ。

クラシックカーにはその時代にあったキャリアが似合う

 ヨーロッパでは1980年代に入ると、現在でも流通している四角いバーのシステムキャリアがTHULEよりリリースされる。当初から多くの車種に装着できるように、脚(フット)を別体とし、さまざまなアタッチメントを組み合わせることで、サーフボードだけでなく、カヌーや自転車なども搭載できる仕組みが出来上がる。

 これにルーフボックスやキャリアラックなどを組み合わせるのは、現在のアウトドアシーンでも基本的には大きく変わっていない。このシステムを基本に現在では複数のメーカーがシステムキャリアをリリースし、これが全国に広がっている状態だ。

 逆に言えば、このシステムラック以前の年代のクラシックカーには、やはり当時のルーフラックやルーフキャリアが似合うのだ。リプロダクションが今でも入手できる製品も多いので、クラシックカーのオーナーはぜひともキャリアの時代考証にも目を向けてみてほしい。

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