新型「SL」はAMGの完全自社開発
メルセデス・ベンツは伝統のラグジュアリーオープンの「SL」をフルモデルチェンジ、7代目となる新型を発表した。初代は1952年に公道も走れるレーシングスポーツカーとして登場、ル・マン24時間レースでのワンツーフィニッシュをはじめ数多くのレースで輝かしい戦績を重ねた「300SL」をベースとし、1954年には市販モデルが登場している。
後席が採用され2+2オープンに進化
初代登場から70年後に登場した今回の7代目は、ラグジュアリーGTという従来からのキャラクターだけでなく、よりスポーティなモデルへと進化すべく、ハイパフォーマンスモデルを手がけるAMGの完全自社開発モデルとして誕生した。
そんな新型のポイントはAMGがボディシェルから開発を行ったことはもちろんだが、優雅なソフトトップの採用や2+2レイアウトの採用などであろう。まずは2L 直4ターボを搭載した「SL43」(1648万円)が登場した。
ソフトトップは先代のハードルーフ(バリオルーフ)から電動ソフトトップに変更された。これは新型がよりスポーティ性を重視しており、より軽くて重心を低くするために採用されたという。
21kgの軽量化を実現したソフトルーフは、防音マットを挟んだ3層構造とされ室内の静粛性を向上させた。開閉にかかる時間は約15秒、車速が60km/hまでなら走行中でも開閉可能とされた。また、新しいソフトトップはコンパクトに畳まれるだけでなく、畳まれた際のカバーが不要となっており、ラゲッジも広くなっている。ラゲッジ容量はオープン時で213Lを確保、ルーフを閉じた際には約240Lまで拡大する。
エクステリアは空力性能を追求しつつも、ロングノーズ、ロングホイールベース、ショートオーバーハングといったSLの伝統を継承したラグジュアリーなスタイルで、2+2のシートレイアウトを採用したためにボディサイズは拡大している。
AMGらしいスポーティさは、専用フロントグリルなどで表現、14本の垂直ルーバーを備えたフロントグリルは立体形状へと進化、より低い位置にレイアウトされたことでダイナミックなフォルムをさらに強調している。
熟練マイスターが組み上げる初の直4を搭載
ラグジュアリーなインテリアは、翼の形をした左右対象のダッシュボードと、左右対象でありながら運転席を重視した造形に仕立てられた。新開発のタービンノズルの形状をした4つのエアアウトレットも特徴的だ。
ポイントとなるセンター部の縦型11.9インチのメディアディスプレイには、オープン時の光の反射を防ぐため画面角度の調節機能(12度〜32度)が備わっている。
新型の見どころの一つである後席は「日常的に(クルマを)使うための実用性を高めるもの」とされ、座れるのは身長150cmまで(チャイルドセーフティシート装着時は135cmまで)。大人が乗ることはほぼできず、荷物を置くのに便利な場所ということになる。ちなみにゴルフバッグを積むことも可能とのことだ。また、後席を使わない時には、後席背後に室内への風の巻き込みを防ぐドラフトストップが装着できる。
エンジンはAMGの「One man, One engine」主義にのっとり、熟練マイスターが手作業で組み上げる初の直4となる、最高出力381ps/最大トルク480Nmを発生するM139型を搭載。このエンジンにはF1由来の技術であるエレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーが採用された。
これは、ターボの軸をモーターが直接駆動する仕組みで、ブースト圧を維持できるため途切れることなく、全回転域でレスポンスが向上するという。湿式多板クラッチを採用したAMGスピードシフトMCTと組み合わせ、0-100km/h加速は4.9秒、最高速度は275km/hとなる。
足まわりには可変ダンピングシステムを搭載した新開発AMG RIDE CONTROL サスペンションを標準装備。サスペンションは前後共にマルチリンク式となるが、フロントへの採用はAMGの量産車としては初となるそうだ。