人間の意図の通りに動かす独特の感触があった
レグナムは、三菱自動車工業の中核4ドアセダンであるギャランのステーションワゴン版だ。1996年に登場した当時、市場ではスバル・レガシィツーリングワゴンが絶頂期にあった。
レガシィは、1989年にそれまでのレオーネの後継として誕生し、1996年の時点では2代目となっている。スバルは、レオーネの時代からリゾートエクスプレスとして水平対向ガソリンターボエンジンを搭載した4輪駆動(4WD)のステーションワゴンを売りとしており、2代目レガシィでもそれを継承した。ことにその2代目では、4ドアセダンの存在を忘れさせるほどツーリングワゴンの人気は高まり、販売店のショールームに4ドアセダンが展示されないほどであった。
ランエボの技術をレグナムにも採用
レガシィ・ツーリングワゴンの牙城を崩すべく登場したのがレグナムである。スバルが舗装路での4WDを特徴としているのと同様に、三菱も、ランサー・エボリューションで開発したアクティブ・ヨー・コントロール(AYC)と、アクティブ・スタビリティ・コントロール(ASC)という電子制御を採り入れた4WDを先端技術として誇っており、これをレグナムにも装備した。
動力面では、三菱が世界初として量産市販車のエンジンに採用したガソリン直噴(GDI)を採用するとともに、V型6気筒のガソリンターボエンジンをVR-4に設定し、スバルのリゾートエクスプレスに対抗する高速に長けた車種の設定もした。
1代限りで終わってしまった過去
電子制御4WDと、過給エンジンの高い動力性能は、車両性能としてツーリングワゴンを上まわっていたかもしれない。また、運転感覚は、それぞれに別の世界観を持ち、好みに応じて選ぶ理由を覚えさせた。当時のギャランやレグナムには、たとえばガンダムのような高性能ロボットを操るかのような(もちろんガンダムを操縦したことはないが……印象として)機械を人間の意図の通りに動かす独特の感触があった。一方、ツーリングワゴンには、レオーネ時代からの15年におよぶ歴史があり、そのなかで高速ステーションワゴンの価値を築き上げてきた土台があった。
残念なことに三菱は、2000年にいわゆるリコール隠しといわれる重要不具合情報を運輸省(現在の国土交通省)へ報告していなかったという不祥事が起き、その車種にレグナムも含まれていた。クルマとしての商品性というより、企業の姿勢が問われるかたちでレグナムにも販売の影響があったのではないか。レグナムはモデルチェンジを迎えることなく、この初代のみで2002年に生産を終了することになる。