街乗りでもオフロードでも安心な装備が充実
本格オフロード性能を備えるディフェンダー110だが、今回はオフロードコースに足を踏み入れることはなく、東京都内と拙宅のある神奈川県小田原市内、それに東北道で仙台を経由しながら秋田県大館市と秋田市の市街地までという行程。普段使いの視点で重宝した機能をいくつか紹介しておこう。
まず乗り降りの際は、電子制御エアサスペンションで車高を40mm下げられるのが助かるポイント。それでも小柄な人だと少しよじ登るような形になるが、運転席と助手席ならダッシュボード両脇がグリップ形状になっていてサポートしてくれる。なおオフロード走行では標準の車高から75~145mmアップできる。リヤのラゲッジルーム内にもエアサス上下スイッチが備わっているあたり、使い勝手へのこだわりが徹底している。
ルームミラーはデジタルとアナログの切り替えが可能で、後方視界の悪さを補う装備。ただし、専用カメラが高さ2m近いルーフの後端に取り付けられているので、信号待ちや渋滞などで小さいクルマやバイクが後ろにピッタリ付いていると死角になるのは注意点だ。
とはいえ、周囲を様々なアングルで確認できる優秀な「3Dサラウンドカメラ」が視界の不安をすべて一掃してくれる。クルマから見た視点だけではなく、外側からクルマを見る視点も用意されているので、狭い駐車場や路地、林道などで身動きとれないような状況でも、冷静に脱出することができるだろう。さらに加えて、「オフロード」モードにするとボンネットを透視したように前方の地面の状況をスクリーンに表示することも可能となっている。日本の狭い道にはちょっと大きくて……といった不安やストレスは無用なのだ。
満タン給油での航続距離は900km以上の頼もしさ!
ところでこのロングドライブを行なったのは2022年8月中旬で、ちょうど東北地方では線状降水帯による豪雨被害が報道された直後。日程とルートの面でそれほどリスクはないと判断したのだが、それでも大館市から秋田市へと移動する途中から、大雨に見舞われてしまった。高速道路の路面も深い水たまりが随所に発生してハイドロプレーニング現象の見本市のような有り様となり、時おり路側帯に一時避難するクルマも散見された。
そんな地獄のような状況では、ディフェンダー110の直進安定性の高さと4WD制御が非常に心強い。ロングホイールベースと約2.4tの車重もあってどっしり安定した走りのままで、さすがに大きな水たまりでは緊張するが、大きくハンドルが取られることもなく、淡々と目的地までたどり着くことができた。
秋田市に泊まった翌日は、同行した友人を仙台に送り届け、その日のうちに小田原の自宅まで一気に走った。長距離を走っても肩こりなどの肉体的疲労は一切なく、トイレ休憩のみで帰れたのも、高級SUVとしてのディフェンダー110の実力の高さといえるだろう。
気になる燃費は、ワインディングを走り回った(とはいえジェントルな走り)区間では8.1km/Lまで落ち込んだものの、全行程1861.2kmを走り終えての総合燃費は11.1km/L。夏場なのでエアコン全開、とくにエコランは意識しないでの数値で、ボディサイズを考えれば上々だ。
燃料タンク容量が85Lもあるので、満タン状態での航続距離は900km以上。実際、1800km以上を走って給油は3回だけで済んだ。また、燃料価格が高騰している時期で、ディフェンダー110に補給した軽油とハイオクとの価格差は場所にもよるがリッターあたり30円近くもあった。表面上の燃費を運用コストの安さでカバーできるわけである。
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世界中の自動車メーカーが電動化を巡って右往左往している昨今。これまで燃費性能と環境性能を追求して進化してきたディーゼルエンジンは、いまやパフォーマンスにおいても官能性においても熟成の極みにあり、とりわけEVが苦手とするロングドライブでは圧倒的なアドバンテージを持っている。ディフェンダー110の「インジニウム」エンジンは、ディーゼルの可能性を強く感じさせてくれたのだった。