20周年となる「コペン」が200台以上集結
改めてダイハツ「コペン」(しかもGRスポーツ)を借り受けて京都行きを決めた理由は、鈴鹿GPスクエアで開かれるイベントに誘われたからだった。今年2022年は、コペンのデビュー20周年。それを祝って愛好家たちが開催する大オフ会に、なぜかゲストとして呼ばれたというわけだ。
ドレスフォーメーションのバリエーションは数えきれないほど
旧型(88)は嫌いじゃない。もう生産が終わりそうだと聞いたとき、真剣に購入を検討したほど。今でも街道沿いの中古車屋に緑や黄の88コペンが並んでいると、ついつい食い入るように見てしまう。小豆色なら立ち寄りたくなるほどだ。
じつは小さいクルマも大好物。「ビート」や「AZ1」、スズキ「フロンテクーペ」、フィアット「500」、ローバー「ミニ」などを所有したことがある筆者にとって、88コペンもまたとても魅力的に映る。日本の軽スポーツカー万歳だ!
ところが40(現行型)へとモデルチェンジして筆者のコペン熱は一気にダウン。パフォーマンスそのものは悪くなかった。どころか、素晴らしく良くなっていた。ジムカーナコースを走った時などは大いに楽しんだ。
とはいえ、エクステリアデザインが好みじゃなかった。「ドレスフォーメーション」という着せ替えコンセプトはクルマ好きの夢のひとつでとても楽しいアイデアだったけれど、とくに顔つきが好きになれなかった。
今にして思えば、先取りしたマスクだったとも言える。世間のクルマがどんどん派手になって、それでもなお、ユニークさを保っているのだから……。
筆者に未来のカタチを見る目がなかった、というわけで、コペン最大の魅力が「ドレスフォーメーション」であり、愛好家たちは好き勝手に楽しんでいるという事実を生誕20周年の大オフ会で目の当たりにした。「ドレスフォーメーション」はメーカーが用意した変身パッケージのことだ。けれどもオーナーたちはそれを逆手にとって、自分好みのスタイルにコンバートすることを楽しんでいる。
GPスクエアには新旧あわせて200台ほどが集まった。40コペンの中には最近納車されたようなノーマル個体もちらほら。けれども大半がトランスフォームされている。88コペンでフルノーマルはなんと1台のみ。集まったほとんどのコペンが何かしらの手を加えられていた。しかも、改造のコンセプトが多様で驚く。このあたりにコペン人気の秘密がありそうだ。
そもそもメーカーが並べるラインナップが色々あって、コペンのイメージはひとつに定まっていない。だから幅広く、多くの人から愛されている。イベントに集結した個体それぞれの改造テーマを見渡しても、レースカー風(GTマシンみたい)あり、クラシック風(ポルシェっぽく)あり、ハイライダー風あり、イタ車風あり、ラグジュアリーありと、拾いきれないほど様々なパターンがあった。
そんなモデル、日本はおろか世界を見渡してもコペンだけじゃないか。ドレスフォーメーションというメーカーのコンセプトからは逸脱するかもしれないけれども、柔軟なパネルの仕組みが多くの創造性を刺激したと言えそうだ。未来のクルマ造りに向けて、ダイハツはとても可能性のある、そして他にはない貴重な嗜好のオーナーたちにアクセスできる。ま、それを生かすも殺すもディーラーとメーカーの考え方次第だけれど。
長距離ドライブにはレカロシートがありがたい
もっとも、改造して楽しい、の裏には、ベースとなるクルマそのもののパフォーマンスが優れていなければならない。コペンGRスポーツはどうだったか。
我々のジェネレーション(50歳代)にとって、MOMO・RECARO・BBSは三種の神器だ。最近めっきり見かけなくなった3点セットにはついつい惹かれてしまう。なかでもレカロシートのありがたさは、鈴鹿までの長距離ドライブで身に染みた。身体をしっかりと包み込み、腰から上を安定させてくれるから視線のブレが少なく、そもそもの安定した走りと相まって、居住空間をいたずらに狭く感じさせない。だから120km/h制限の新東名高速でも流れにのって安心して走っていられる。
CVTのマナーだけは相変わらず好きになれなかった。けれどもマニュアル操作を選んで積極的にパドルを使えば、じつは楽しめる。なかでも4000回転前後におけるエンジンフィールとエグゾーストサウンドが気に入った。街中で気軽に使えることを考えればCVTとはいえ2ペダルもありだ。もちろん、リセールバリューを考えて3ペダルのマニュアルミッションを選ぶという手もあるが。
ダイハツは今後もコペンを作り続けると言っている。鈴鹿のイベントにはメーカーやディーラーの方々もけっこうおられたようだ。彼らはコペンがいかに愛されているか、知っている。次世代の楽しいクルマ造りも期待できるんじゃないだろうか。