国産Lクラスミニバンで人気を誇るアルファード
国産ミニバンの最高峰と言えば、まずはトヨタ「アルファード」を思い浮かべる人がほとんどだろう。このところ同クラスのライバルであるはずの日産「エルグランド」は振るわず、販売台数や人気で圧倒的な差をつけられている。
エルグランドがLクラスミニバン人気に火を付けた
もっとも、国産高級ミニバンの先駆けとなったのは、むしろエルグランドのほうだ。そのデビューは初代アルファードの発売から遡ること5年前の1997年5月。「キャラバン」と「ホーミー」のミニバン版としてデビュー(販売チャンネルによってキャラバンエルグランド、ホーミーエルグランドと呼ばれていた)。1998年1月には今では日産車の大きな戦力となっている「ハイウェイスター」グレードを追加。一般ユーザー向けの高級多人数乗車としてはもちろん、ジャンボタクシーや救急車などにも使われ、2002年に2代目へと引き継がれている。
だが、一定の人気と需要があったエルグランドが登場して5年目の2002年5月、後出しじゃんけんではないけれど、トヨタからついにLクラス乗用ミニバンのアルファードがデビューすることになる。以来、国産Lクラスボックス型ミニバンのゲームチェンジャーとなり、「ヴェルファイア」とともに現在に至るエルグランドを凌ぐ人気車種になったことは周知の通り。
高級感あふれるデザインやパワーユニットの充実が魅力的だった
では、初代アルファードはどうしてエルグランドを上回れたのか? その理由はまず、エクステリアデザインだ。とくに両車の初代比較では、エルグランドはどうしてもホーミー、キャラバンの流れにあるもので、堂々感、高級感に欠けていたように思える。一方、アルファードはスラントしたフロントグリル、より立派感あるリヤビューを含め、エクステリアデザインの完成度でリード。
アルファードの絶対的人気の要因はパワーユニットにもあるはずで、エルグランドは3.5L V6のみだったのに対して、アルファードは初代から3L V6に加え、価格的にも買いやすい2.4L直4を用意。決定的だったのは、翌2003年7月には早くもハイブリッドモデルを追加したこと。エルグランド1種類、アルファード3種類と、パワーユニットの品揃えでも圧倒することになる。
100mmプラスの室内高がユーザーからの支持を得た
もうひとつ、現在のアルファードとエルグランドにも共通する、Lクラスボックス型ミニバンの大きな商品力の違いがあった。さて、なんでしょう?
答えは室内高。現行型で説明すると、エルグランドは1300mm、アルファードは1400mmだ。以前、現行型アルファードの開発陣に、エルグランドを圧倒するアルファード人気について聞いてみた際、ひとつの大きな要因が室内高にあるとの答えで、1400mmがボックス型ミニバンの室内の広々感を表現する理想の高さだという。一方、エルグランドは1300mmであり、その差は歴然。それも人気の違いにかかわっているはず……ということだった。
話を戻すと、初代の室内高比較では、エルグランド1325mm、アルファード1390mmである。ここもまた、初代アルファードが国産Lクラスボックス型ミニバンのゲームチェンジャーになりえた大きな理由だと考えられるのだ。ちなみに現在の人気国産Mクラスボックス型ミニバンでさえ、室内高1400mmが基準となっているほどだ。
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整理すると、初代アルファードがなぜエルグランドを上回れたのかの要因は、1:エクステリアデザイン、2:パワーユニットの選択肢、3:室内高の違いがあったということだ。
現行型でもエルグランドには2.5Lエンジンはあっても、アルファードのようにAC100V/1500Wコンセントが用意されるハイブリッドはなく、室内高でもアルファードに差をつけられているのが、両車の販売台数や人気の分かれ道になっているはずだ。ちなみに小学生4~5年の平均身長が140cm前後。室内高1400mmは子どもが室内で立って歩きやすい(着替えも容易な)高さでもある。