日本ではオデッセイがミニバンとしてデビュー
日本でミニバンというクルマが意識されたのは、1994年にホンダ・オデッセイが発売されてからだ。
ミニバンの発祥は米国だ。商用として荷物を積んだり多人数乗車できるバンがまずあり、のちに、より小型のバンとしてミニバンが登場した。いずれも商用車を基本としたので、トラックのようなシャシーに箱型の車体を載せたのが米国のバンやミニバンだ。クライスラーのダッジキャラバンやボイジャーなどが代表例といえる。ミニバンは、大勢の子どもたちをスポーツに連れていくなどの際に活躍し、米国の暮らしに浸透していった。
商用バンを持たないホンダだからこそ登場した
それに対し、オデッセイは乗用車のアコードを基に開発されたので、米国のミニバンとは商品性が異なる面があった。見た目は似ていても、走行性能や乗り心地が乗用を主体としているため、走って楽しく、乗って快適なミニバンになったのである。
ホンダがミニバンの開発に乗り出した背景には、トヨタや日産などほかの自動車メーカーが、商用バンを基にしたワンボックスカーを乗用で品揃えしていたのに対し、商用バンを持たないホンダは劣勢に立たされていた。
同時に、やはり1980~1990年代にかけて人気を集めたいすゞビッグホーンや三菱パジェロのような、4輪駆動のRV(レクリエイショナル・ヴィークル)もなかった。相変わらず、セダンやハッチバックなどを主体とする商品体系でいたため売り上げが落ち込み、一時は、パジェロ人気に沸く三菱自動車に合併されるのではないかといった噂まで飛び出していた。
そこから一転、ホンダがそれまで持たなかったワンボックスやRVに代わる商品として生み出されたのが、ミニバンとSUV(スポーツ多目的車)、そしてコンパクトワゴンなどであった。オデッセイ、ステップワゴン、CR-V、S-MXがそれで、これらの車種をまとめて、ホンダはクリエイティブ・ムーヴァーと命名した。それらはすべて、セダンやハッチバックなどを基に開発されていた。
それが逆に、快適に使える多人数乗車や、未舗装路も走れるクルマ、荷物も積めるワゴンという価値を生み出し、消費者の目を惹きつけたのである。
世界的なミニバンの姿として定着していった
クリエイティブ・ムーヴァーの登場により、他社も、ワンボックスからミニバンへ移行し、RVはSUVへと変わり、コンパクトワゴンに注目が集まるのである。SUVについては、セダンのカムリを基にしたトヨタのハリアーも同様の時期(1997年)に生まれ、CR-V(1995年)とともに米国市場で人気を得ることになる。
米国で生まれたミニバンを、日本流に快適な多目的車としたのがオデッセイやステップワゴンであり、この価値観が世界的なミニバンの姿として定着していくことになる。