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発売が50年早すぎた!? 今こそわかる「バモスホンダ」の先進性とは? じつは究極のホビーカーでした

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 本田技研工業/原田 了

フラットな荷台にフロントパネルとシートを取り付けたユニークなスタイリング

 それではバモスホンダのメカニズムを紹介していきましょう。ベースとなったのはキャブオーバー・トラックのTN360(より正確に言うなら1970年の1月に大幅なマイナーチェンジを受けて登場したTNIII360)がベースです。トラックには珍しくモノコックフレームを持っていて、そのモノコックにサブフレームを介してエンジンやトランスアクスル式のトランスミッション&デフ、さらにはサスペンションなどを搭載するパッケージングとなっていました。

 バモスホンダは、このモノコックを一新しフラットな(丈の低い箱形の)モノコックにフロントパネルを追加し、さらに1列2座ないし2列4座のシートを取り付けたものとなっています。フロントサスペンションはTN360、ひいてはN360とも同様のマクファーソン・ストラット式の独立懸架でしたが、リヤに関してはトランスアクスル式のデフからドライブシャフトが出ているためにド・ディオン・アクスル式を採用。これをリーフスプリングで吊るスタイルとなっていました。

 搭載されたエンジンはTN360から流用されたTN360E型で、30psの最高出力も同等でした。バリエーションは2シーターのバモスホンダ-2と4シーターのバモスホンダ-4、そしてバモスホンダ-4の幌をボディ最後端まで延長したバモスホンダ-フルホロの3タイプ。

 幌はルーフ部分とバックパネル部分を覆っていましたがドアはなく、代りに乗員の重心位置よりも高い位置に保護用ガードパイプが取り付けられていました。バモスホンダが発売された時点の法令では運転席のみシートベルト装備が義務付けられていましたが、バモスホンダは全席にシートベルトを装備。

 またフロントシートのシートバックに沿ってロールオーバーバーが装着され、転倒した際の乗員保護にも配慮されていました。さらにフロントパネルにスペアタイヤが取り付けられており、これも対衝突では衝撃吸収効果があったのです。

 個人的にはバモスホンダを所有したことはないのですが、30数年前に知人に頼まれてわが家に留め置いていたことがありました。本来の駐車場には旗艦であるアコード・ワゴンを停めていたので、件のバモスホンダと初代ライフ4ドアのAT仕様、全くの“趣味グルマ”が2台、テラスハウスと呼ばれる2軒長屋の軒先に止まっていたシーンそのものが、堅気ではなかったと今では苦笑いするしかないのですが、それでもバモスホンダに関しては理解不能な1台だったと記憶しています。

 しかしクルマの趣味が多様化した今では、バモスホンダの存在意義も充分に理解できるようになりました。それは2022年1月に開催された東京オートサロンでのこと。フォレスト・オート・ファクトリーのブースに出展されていたFAFビーチクルーザーを見て「そうか、こういうテがあったか」と目から鱗でした。

 社会もモータリゼーションも充分に成熟していたら、バモスホンダの存在意義も理解できていたろうと思うと、バモスホンダもまた登場が早過ぎた1台だったということでしょう。もっとも今登場したとしても六十路坂を駆け降りている身には、やはり縁がなかったと思います。悔しいけれど。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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