チューニング後はスムースな走らせ方が変わることも
エアクリーナーにマフラーといった気軽に試せるメニューから、タービン交換や排気量アップまであるエンジンのチューニング。足まわりやブレーキと同じでパーツを交換しただけでも一定の効果は得られるが、恩恵をフルに味わうならクルマの特性に合わせた走り方にアジャストする必要がある。
街乗りとサーキット走行で注目すべきポイントが異なる
とくに注目してほしいのはトルクバンドとパワーバンドで、そこを意識するだけで走りがスムースになる可能性が高い。まずはトルクとは何かを説明しよう。簡単に書くとトルクは物体を回転させる力を示す数値で、例を挙げると自転車でペダルを踏み込む力がトルクであり、その力が大きければ大きいほど自転車は速度を出しやすい。
トルクバンドとはエンジンが最大トルクを発生する回転域を指す言葉で、エンジンがもっとも効率よくパワーを発揮できる回転域がパワーバンドだ。
では両者を走りで使い分けるにはどうすればいいか。サーキットのように燃費は二の次でタイム最優先なら、高回転のパワーバンドをキープするために、ひとつ低いギヤを使うような走り方がベターだろう。いっぽう街乗りはトルクバンドを外さずに高めのギヤで走るほうが燃費は良く、加速する際もシフトダウンする手間がいらない。
ちなみに自車のパワーバンドやトルクバンドを確認する方法だが、カタログにピークの数値とそれを発生させる回転数は記載されている。トヨタGR86ならパワーが235ps/7000rpmでトルクが250Nm/3700rpm、この場合パワーバンドは3700~7000rpmあたりと考えていい。いっぽうトルクバンドはピークの3700rpm前後だ。
大幅なチューニング後はパワーチェックで特性の変化を把握すること
チューニングでパワーやトルクが大きく変わった場合は、シャシーダイナモで計測したグラフを参考にするのが一般的。横の軸がエンジン回転数で縦の軸がパワーとトルクを示しており、回転数が高くなるにつれ右肩上がりになっているのがパワー曲線、そして低回転域から急速に立ち上がっているのがトルク曲線だ。いずれもピークは曲線のもっとも高いポイントで、そこを基準にパワーバンドとトルクバンドを判断しよう。
なおグラフを見ればウイークポイントも推察できる。トルクの線が谷のように落ち込んでいる回転域で、加速が明らかに鈍いので体感的にも分かりやすい。原因は元からそのような特性であったりパーツの組み合わせであったりと色々あるが、吸排気系の見直しやECUのセッティングなどである程度は解消することが可能だ。
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ノーマルやライトチューンでも乗りにくさや加速が極端に悪い部分があると感じたのなら、プロショップに持ち込んでパワーチェックし「トルクの谷」があるか検証してもいいだろう。自分のクルマがもっとも得意とする回転域がどこかを把握すれば、サーキットにしろ街乗りにしろ走りの効率が劇的にアップし、エンジンのチューニングを進めるうえでも大いに参考となるはずだ。