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海外の道路でよく遭遇する「ハンプ」と「スピードバンプ」の役割は? 歩行者を保護するのに日本で定着しない理由とは

セルビアのゴム製スピードバンプ(Photo: Public Domain)

形も材質も様々だけど世界各国の道路で採用されている

 前回のコラムで取り上げた「ラウンドアバウト」と同じように、海外ではよく見かけるのに日本ではあまり目にしない道路の作りに、「ハンプ(hump)」や「スピードバンプ(speed bump)」がある。

 カタカナで書くと「゛」があるかないかの違いしかないが、英語での意味も似ていて、辞書を調べるとどちらも「コブ」という訳が出てくる。ただ道路の場合、ハンプとバンプは進行方向で見たときの長さが違う。ハンプは「丘」、バンプは「突起」という表現がわかりやすいかもしれない。

生活道路などでクルマを強制的に減速させる

 歴史は古く、1906年のアメリカの新聞ニューヨークタイムズに紹介されたという記録があるほど。フォードT型が登場する少し前のことだから、馬車などを想定して考えたのかもしれない。とはいえ本格的に普及したのは、欧米ともに第二次世界大戦後になってからだったようだ。

 クルマを運転する人なら、目的は一目瞭然だろう。通過するクルマのスピードを落とすことだ。僕が見たヨーロッパの事例では、生活道路の横断歩道周辺などに設置されていることが多かった。

 信号のない横断歩道を渡ろうとする歩行者を妨害すると交通違反になるのは、世界の多くの国でルールとして決められている。なのにハンプを用意するということは、裏を返せば欧米でも止まらないドライバーはそれなりにいたということなのだろう。

 形状はさまざまで、路面全体に傾斜をつけて盛り上げるタイプのほかに、薄い台を路面に載せたようなタイプもあった。

なぜ日本ではあまり普及しないのか?

 ではこのハンプ、なぜ日本ではあまり見かけないのか。以前国内の道路に設置されたときのニュースでは、通過するドライバーからはクルマが壊れないか心配、道路沿いの住民からは通過音がうるさいというネガティブな意見を目にした。

 ゆっくり走ればクルマは壊れることはないし、通過するときの音も静かになる。というか、そもそもゆっくり走らせるための装置なのに、それを頭から無視して自分の都合を押し通し、それが住民の誤解を招くという状況だったようだ。

 日本は交通事故死者中の歩行者の割合が、先進国の中でかなり高い国として知られている。その理由のひとつとして、歩行者保護という基本中の基本をわきまえない、このようなドライバーがいるからではないかと思っている。

「ゾーン30プラス」とともに普及するかと思われたが……

 国もこのままではいけないと思ったようで、国土交通省道路局と警察庁交通局が2021年8月、「ゾーン30プラス」なる新しい区域を設定していくと発表した。

 これまでは国土交通省道路局でガードレールや狭さくなどの設置、警察庁交通局でゾーン30による速度規制などを進めてきたが、今後は両者が緊密に連携しながら、最高速度30km/hの区域規制「ゾーン30」と物理的デバイスを組み合わせ、生活道路における歩行者優先の思想を根付かせていくというものだ。

 そのひとつとして考え出されたのが、物理的デバイスのひとつである「スムーズ横断歩道」。従来は横断歩道の手前に設置していたハンプを大型化し、横断歩道全体を盛り上げる形にしたものだ。歩道と横断歩道の間の段差もなくすことができるので、バリアフリーにもなる。

 強化ゴム製なので騒音が抑えられるとともに、運搬可能としたことで設置を容易にしていることも特徴。これまで全国40カ所以上に設置された。ただし多くは期間限定の実証実験となっていたようで、東京都内に設置された写真のスムーズ横断歩道は、期間が終わると跡形もなく消滅してしまった。

 最近になって、横断歩道での歩行者妨害を取り締まる場面が多くなったのは、日本ではハンプの普及は難しいと結論づけられたためかもしれない。個人的には警察官に見られながら横断歩道を通過するより、ハンプを見つけて手前で減速するほうが精神的に全然いいと思うのだが。

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