トヨタの小さな高級車というにふさわしい仕立てだった
トヨタ「プログレ」は、バブル経済真っ盛りの1998年に誕生した。車体寸法は5ナンバー枠に収めながら、直列6気筒エンジンの排気量が2.5Lと3Lであったため、そこに贅沢さを見せつつ、3ナンバー車となっていた。発売の際の宣伝文句は「小さな高級車」である。
ドイツのメルセデス・ベンツは、1982年に同社初の小型車となる「190」を発売し、日本では5ナンバー車として登録された。そのなかに、直列6気筒エンジンを搭載した上級車種があり、プログレはまさに190の上級車種を目指すような存在といえた。
最先端のライト技術を使用していた
プログレの運転席に座った印象は、「クラウン」というより「セルシオ」に近い感触があり、静粛性にも優れていた。ゆったりした乗り心地で、高速走行にはあまり向かない印象があったが、これも初代セルシオに通じる個性であり、まさにトヨタの小さな高級車というにふさわしい仕立てであった。
一方、外観は比較的おとなしい印象があり、あまり目立たなかった。ことに後ろのコンビネーションランプは、タクシー仕様のクラウンコンフォートに似ており、事前の取材会で遠目に見たときには、新しいタクシー仕様が公開されるのかと思った記憶がまだ残る。
トヨタに限ったことではないが、国産車は、少し遠めに見たときの存在感や質感に劣る造形であることがある。近づいてみると、最先端のライト技術が使われていたり、抑揚に凝った造形であったり、深みのある塗装であったりするのだが、一目瞭然で高級車であるといった外観づくりは苦手なようだ。そこが、あえていえばプログレの弱点であったかもしれない。
のちに、兄弟車としてブレビスが発売となり、こちらのほうが独特な外観で目立つ印象があった。しかし乗り味の上質さは、プログレのほうが圧倒的だった。
プログレは結局、モデルチェンジを迎えることなく1代で終わり、2007年に生産が終了した。