NSXから始まったタイプRシリーズを振り返る
マックス・フェルスタッペンが、ホンダ製パワーユニットRA621Hを積んだレッドブルRB16BでF1ワールドチャンピオンになったのが2021年。2022年もホンダが開発したRBPTのPUを積んで、ホンダのロゴマークを付けたレッドブルRB18で、マックスがドライバーズタイトルを連覇した。そしてコンストラクターズタイトルも獲得している。
やっぱりホンダはモータースポーツ。ミニバンや軽自動車のメーカーではなく、スポーツカーこそホンダの看板にふさわしい。
そんなスポーツのホンダの象徴ともいえるのが、一連の「タイプR」シリーズだ。タイプRシリーズの元祖NSX-R(NA1)の登場から2022年で30年となるのを記念して、ここでその歴代タイプRを前編と後編に分けて振り返ってみよう。
NSX-R(NA1)
1992年11月に登場したのが、スポーツカーとしてのNSXの運動性能を極限まで追求したNSX-R。もともとオールアルミボディで軽量だったNSXを、グラム単位でさらなる軽量化を図り、約120kgのダイエットに成功した。
サスペンションはよりスポーティな専用チューンで、リヤダンパーは別タンク式になった。エンジンはレーシングエンジンのノウハウを投入し、クランクシャフトのバランス精度を向上させ、ピストン、コンロッドの重量精度をアップさせている。
ファイナルギヤも、ベース車の4.062から4.235へ4.3%引き下げ加速性能を重視している。また、レカロと共同開発の超軽量フルバケットシートやチタン削り出しのシフトノブも採用。タイプRのイメージカラーとなるチャンピオンシップホワイトと赤い「H」のエンブレムもこのクルマからとなる。
「スポーツカーの終わりとレーシングカーのはじまりの境界線にある」というのが、NSX-Rの位置づけだった。
インテグラタイプR(DC2)
ある意味、歴代タイプRでもっともタイプRらしいといえるのが、このDC2。デビューは1995年となる。VTECエンジンが与えられ、もともとスポーティだった3代目インテグラをベースに、ホンダ社内のインテグラ開発チームがチューニング。20psもパワーアップされたB18Cはなんとリッター111ps。ポート内の段差は熟練工によって研磨・修正され、赤いヘッドカバーが与えられた。
ボディは約40kgも軽量化され、サスはバネレート・減衰力をアップ。車高も15mmダウンとなり、ヘリカルLSDも与えられている。
DC2が革命的だったのは、単に速いだけでなく、ハンドリングの切れ味が抜群だったこと。DC2の登場以前は、「FF=アンダーステア」という図式を破れなかったが、DC2はどちらかというと弱オーバーステアの特性で、「もう、アンダーステアとは言わせない」という強い決意を感じさせる一台だった。
1998年にマイナーチェンジがあり、タイヤとブレーキがサイズアップ。ホイールも4穴から5穴となり、エキマニも4-2-1から4-1に変更している。マイナー前のDC2を96スペックといい、マイナー後を98スペックと呼ぶ。