キャデラックのEV第2段はスーパーラグジュアリー
キャデラックは2022年10月、EVモデルのフラッグシップとなる「セレスティック」の市販バージョンを公開した。セレスティックはブランドのEV化の未来を担うウルトララグジュアリー フラッグシップEVセダンであり、ラグジュアリーブランドであるキャデラックを「世界のスタンダード」として再構築するための象徴となるという。
2030年までにほとんどのモデルを電動化すると発表しているキャデラックのEV第2弾は、1台ごとに仕様が異なるパーソナルオーダーを採用し、手作業で製作されることとなった。ちなみにキャデラック初EVは「リリック」だ。
市販モデルはショーカーと変わらぬスタイルで登場
発表された市販バージョンは2022年8月に公開されたショーカーとほぼ変わらぬ先進的スタイルで登場した。開発にあたり、デザインチームは戦前のV16エンジンを搭載した特注セダンの「コーチ」や1957年のコンセプトカーである「エルドラド ブロアム」など、「ラグジュアリーの頂点を極め、キャデラックを世界のスタンダードとすることに貢献した」ブランド初期のセダンを特徴づけた職人たちの技術などを確認したという。それらの伝統を現代の技術やテクノロジーで蘇らせている。
また、ミッドセンチュリーをはじめとするクラシック建築やアメリカを代表する象徴的デザインなどからもインスピレーションを得ているという。
プラットフォームには、GMの第3世代となるグローバルEVプラットフォームを採用。安全性の高い、パウチ型のリチウムイオンバッテリー「アルティウム」が搭載される。アルティウムはパウチ型のセルを上下左右自由に積載できるため、様々なサイズのクルマに搭載可能なバッテリーだ。GMが開発し、ホンダも採用する予定となっている。
セレスティックではバッテリーを低い位置に水平に並べることで、ボディスタイルを長く、低く、スリムに仕立てることを可能としている。また低い位置に積むことで低重心化を実現し、ハンドリング性能や乗り心地を高めることにも貢献している。
バッテリーは111kWを搭載。最高出力600hpの2モーターを採用する4WDで、一充電走行可能距離は483kmとなる。また、マグネティックライドコントロールを採用したエアサスペンションや、後輪操舵システム、アクティブロールコントロールなど走行性能を高める装備も充実させている。
手作業で作られるパーソナルオーダーのフラッグシップ
エクステリアはクーペライクなファストバックスタイルを採用。アルミ製のグリルをはじめ、トリムなどのパーツをすべて金属製とするなどウルトララグジュアリーを体現。調光機能が備わるガラスルーフも備わっている。
リアルマテリアルが用いられるインテリアは、オーナーの好みに合わせたパーソナルオーダー仕様となる。職人の手作業による芸術品さながらの仕立てで、同じ内装のクルマは他にないという。「流麗なラインとクリーンな美しさ」を備えた、ショーカー同様の空間に仕上がっている。
ダッシュボードには2つのモニターを組み合わせた55インチディスプレイが備わり、ハンズフリーも可能な運転支援技術やコネクテッドサービスなども充実している。
セレスティックの仕様は前述のようにパーソナルオーダーとなるが、購入者はディーラーやキャデラックのデザイナーと直接話し合い、従来なかったようなレベルのパーソナライゼーションによる、購入者のビジョンを具現化した1台を完成させることになる。
価格は30万ドル(邦貨換算約4500万円)からとされており、カスタムのレベルにより高くなっていくことになる。
アメリカンラグジュアリーを体現し続けてきたキャデラックの新世代ウルトララグジュアリー フルオーダーモデル、セレスティックは2023年12月に生産開始予定。生産はGMのエンジニアリングとデザインの中心地であるグローバル テクニカル センターで行われることとなっているが、1956年に設立された同センター初の量産車生産となる。
なお、生産は購入者のオーダーした仕様に合わせて1台ずつ手作業で行われるため、一度に組み立てられるのは6台以下。生産台数はごく限られた数となるそう。すでにオーダーが入っており、現在はキャンセル待ちという状況とのことだ。なお、日本への導入などは発表されていない。
【AMWのミカタ】
セレスティックのビジネスモデルは、ロールス・ロイスそのものだ。GMはキャデラックの他にビュイック、シボレー、GMCといったブランドを擁しているが、欧州の高級ブランドに匹敵できる地位を確立しているものは皆無。EVへとシフトしているいま、キャデラックをかつてのスーパーブランドへと回帰させるのが、セレスティックが担った役割と見ていいだろう。